気功法を練る力を失い、九能先輩に抱えて貰いながら東風先生の経営する接骨院に入るなり、早乙女君は上半身をさらけ出し、不意打ちの脱衣に思わず、私とあかねさんは赤くしてしまう。
「止めんか。馬鹿者!」
「いでぇっ!?」
施術台を落ちた早乙女君を東風先生は軽やかに受け止め、早乙女君の身体を触診し、私と同じように気血の流れを断つものを感じている。
ふと、東風先生の顔付きが変わる。
「こ、この火傷の跡はまさか貧力虚脱灸!?」
「あの失われた経絡術のものを…?」
東風先生の言葉に反応できたのは私だけだった。九能先輩も早乙女君もあかねさんも、接骨院でアルバイトしている早乙女玄馬も困惑する。
それもそのはずだ。
このお灸は百年前に途絶えた伝説の経絡鍼灸術の秘伝。おいそれと知ることは出来ない。……まさか、私の身体にもこのお灸を据えられたの?
「男の子は後ろを向いててくれる?」
スカーフを解いて、セーラー服を脱いで東風先生に背中を向けると「まさか君も受けたのか?!」と言う言葉に振り向こうとした九能先輩と早乙女君の顔を、あかねさんが殴り倒してくれた。
「……流石に不味いかな。こんな非力になったことが糸益君や戟號、ライム君にバレたら逃げられない」
「誰だいそれは?」
「東風先生、その人達はみんな切さんの許嫁候補なの。九能先輩と一緒に何とか追い返しているけど。もしも、あの人達にバレたら切さんは……」
悲しそうに顔を背けるあかねさんに、みんなも神妙な顔付きに変わる。いや、早乙女君も私と同じくらい危ないからね?
「(こんなことで『鍵』を開くわけにはいかないし。かといって、貧力のまま過ごすわけにもいかない。なんとかお灸を治す方法を見つけないと……)」
「
「乱ちゃん、赤ちゃんになったんホンマ!?」
いきなり突撃してきた二人に驚き、九能先輩に抱き締められた瞬間、身体を抱き締める力の強さに身体が強張り、ビクリと震えてしまった。
今のはあっては、いけないことだったかな。
「……切君、怖がらせたか?」
「ううん、ごめんね。弱くなっちゃって」
兎に角、この弱くなった身体でどうにか次の許嫁の人を倒さないといけない。気功法を練る事も出来ないから、切り札の「真・呼吸投げ」も使えない。
いや、単純な打撃も使えないかな。
「……お父さんに伝えないとなあ」
「糸色さん、君の事を狙う人が多いことはわかった。微力ながら僕も手伝おう!」
「フフ、ありがとう。東風先生」
力が無くても使える技……あるにはあるけど。