「お見事、粛清の機会は平等に必要だからね」
そう言うと水筒を取り出して頭からお湯を被った男の人は、私と背丈のあまり変わらない男の子に変化した。いや、お湯を被ったという事は歳の差を引き起こす呪泉郷の悲劇的な泉に落ちたのかも知れない。
「切君、彼は誰だ?」
「……知らないかな」
初めて見る男の子だ。
少なくとも私は関わった事も話したこともない相手だ。ただ、ハッキリと分かっているのは彼は経絡鍼灸術を使えるという事と。
そして、私に貧力虚脱灸を据えた相手だ。
「…………アンタ、いや……」
「姉ちゃん、どうした?」
「経絡鍼灸術なんて生半可な覚悟で覚えることは出来ないわよ。アンタ、どこで習ったの?」
「ハハハ、よく聞かれるセリフだね」
小鎌さんの質問に彼は納得と慣れたように笑いながら頷き、地面に倒れて気を失っている糸方褸のロングヘアーを掴み、引き摺っていく。
「一応、許嫁だけど。子供だから関わったりすることはないし。僕は好きな人も居るからね、気軽に九能さんとの結婚報告を待っているよ」
「うむっ!任せておけ、少年!!!」
「く、九能先輩…」
ぎゅうっと私を抱き締める彼の力の強さにビックリしながら車に乗り込み、移動してしまった。私を見つめる九能先輩にドキドキと心臓が高鳴る。
「姉ちゃん、破灸法聞かなくて良かったのか?」
「「「「あ゛っ」」」」
どうしよう、カムバック謎の男の子。
そんなことを考えていたとき、未だに追い掛け回されている早乙女君の姿が見えた。まだ、お爺ちゃんの持っている破灸法の在処を聞いていない。
それを見つければ治る…!
「早乙女君、此方かな!」
「い、糸色、すまねえ!」
ドタバタと逆恨みしている人達を引き連れてやって来た早乙女君とすれ違う最中、九能先輩の青白い暹氣龍魂がみんなを吹き飛ばす。
「フン。他愛ない奴らよ、早乙女乱馬。切君の優しさに免じて貴様の貧力虚脱灸の破灸法探しを手伝ってやろう!切君の優しさに感謝するが良い!!」
「おう。ありがとうな、糸色」
「フフ、困ったときはお互いさまかな」
「僕の恋人に触るな、軟弱者めが!」
「ぎゃんっ!?」
チュドーンと変な煙を巻き起こして、早乙女君は吹き飛んでプールに落ちてしまった。女の子に変わった早乙女君がフラフラとプールサイドに這い上がる。
「ちっ。逃げたか、早乙女乱馬め」
「(九能先輩、まだ早乙女君の体質の事を知らないのかな?教えても信じて貰えるか、小鎌さんが覇者形態になっても気付かなかったし……)」
勘は鋭いのに、鈍い九能先輩もかわいいね。