私と早乙女君の事情を壬生先生に伝えて、破灸法を知っているという和尚様の居るお寺に向かったものの、破灸法を記した人体図は盗難に遇い、此処に残っているのは貧力虚脱灸を受けた場合の対処法だった。
「『貧力虚脱灸を受けた人の正しい生き方』」
「う、胡散臭いわね」
「うむ、胡散臭いな」
「ぜってぇろくでもねえヤツだ」
「『一、横暴に振る舞わず、今まで簡単に倒してきた相手と遭遇したとき、素直に謝りましょう』『二、力に頼らず、人を頼りましょう』『三、もしも婚姻関係の相手がいるなら素直に寄り添いましょう』……だそうです」
「「「意外とまともだった」」」
そんなこんなと話し合いながら、私は最後のほうに載っていた『続きは大人になったら読みましょう』という巻き物の続きは読まずに和尚様に巻き物を返却する。
まだ、私は16歳だから読めないかな。
「しかし、困った事になったわね。どう見てもこの盗っ人の人相書きは八宝斎のお爺ちゃんだし。乱馬を許してくれるとは思えないわ」
「ぐっ」
「おまけに、あのスケベさだ。切君に何を要求するかも分からない。しかし、僕とあかね君だけで取り返せるかと聴かれれば五分も行かんだろう…」
「どうにか人体図を取り返せれば良いんだけど。早乙女君、あなたは正攻法で倒したいのよね?」
「ああ、謝るなんざ死んでも嫌だぜ!」
「じゃあ、修行しよう」
「え?」
「気功法や腕力が使えないなら、少しでも使えるように貧力虚脱灸を受けたまま鍛えれば良いんじゃないかな。私は元々弱かったからさ」
そう言って早乙女君の目の前に座り、また強くなれば良いんだと告げる。
「……なんで、そんなに前向きなんだよ」
「景様はこう言っていたかな。私の進化は光より早い。全宇宙の何者も私の進化にはついて来れない。いくら邪な方法で弱くなろうと私自身に追い付ける相手は居ない」
「出たな。糸色語録」
「糸色語録?」
「糸色景の残した家訓、教示の事だ。今みたいに何か大事な場面で口にすることが多い。妙様は物凄く話していたような気もする」
九能先輩、素直に解説しないでほしいかな。私も格好付けたつもりはあるけど、景様の言葉を口にすると不思議とやる気を出せるんだよ。
現に糸色本家は、かなり凄い人ばかりだから。
まあ、兎に角、やる気を示すときに話すことのある決め台詞や常套句と思えばいいけど。九能先輩のところにも幾つか伝わっているはずだよね。
まだ、私は聞いたことないけど。
きっと、かっこいいんだよね。