破灸法の手懸かりはお爺ちゃんだけど。
早乙女君と私に貧力虚脱灸の破灸法を使って貰えるのかは分からない。どうしようかなと考えながらマスターに淹れて貰ったコーヒーを飲む。
気功法を使えないなら空間把握力も低下して、左側にあるものが見えにくい。ほとんど見えてないけど、こういうときは本当に困るかな。
「ウンウンと唸って、悩みかい?」
「ちょっと変な質問になるんだけど。マスターは自分がいきなり弱くなったらどうする?」
「俺が弱く?……ふむ、そうだな。この感じは乱馬の貧力虚脱灸の話しか?だが、切ちゃんまで弱くなっていると考える。流石に弱った女の子をツカサに襲わせるのは不味いか……」
どうしたんだろう?
ブツブツと聞き取れない声で何かを言い始めるマスターに小首を傾げながら答えを待っていると「そうだな。俺ならまた鍛える」と言ってくれた。
……フフ、やっぱり、その答えが一番だよね。
「ところで、ツカサってだれ?」
「あー、聞こえてたのか。ハッキリと言えば真幌や俺、他の奴らを纏めるリーダーだ。まあ、そのリーダーも今は園田とかに攻撃を受けて怪我して寝込んでるが」
「喧嘩はよくないよ?」
「そうだな。主にお前さん達に迷惑を掛けているわけだが、鳴なるに会ったら伝えといてくれ。あの時は悪かったってよ」
なる?と小首を傾げながら戸惑う。
何に成るのだろう。
いや、名前かな?なる、なる?と不思議に思いつつ、マスターに「なるって、だれ?」と聞けば困ったように笑い、ぺちんと何故かデコピンされた。
「ひぃんっ!?」
「ハハハ、泣き声もそっくりだな。」
ううっ、なんで、デコピンしてきたの?
そう不満に思いながらおでこを押さえていると、ホットケーキを差し出してきたマスターが私の事を子供扱いしている事に気付き、少しだけイヤな気持ちになる。
「……なる、さんが気になるのかな?」
「さてね。昔か未来か分からないからな」
「なにそれ。謎掛け?」
「知りたかったら列車を見つけてみろ。少なくとも乗車する権限は持っているだろうぜ」
やっぱり、よく分からないかな。
マスターは私を誰と重ねているのかな。
「いや、切ちゃんとは似てないぞ。アイツは太陽みたいに笑うし、少なくとも誰かに狙われるような立場でも無かったからな…それに、妙とも関係あるから聴きたかったら聴いてみろ」
「妙様と?……なんで、妙様を知っているの?」
「決まっているだろう。此処は喫茶店だぞ」
コーヒー目当てか、それなら仕方ないかな。
マスターの淹れるコーヒーは美味しいからね。