轟轟と響いて力を抜けば一瞬で身体を引き裂かれる様な竜巻の衝撃に耐える私を九能先輩は抱き締め、木刀を振るって空気を切り裂くけれど。
圧倒的すぎる竜巻の衝撃には、如何に優れた剛刀「風林火山」といえど届かないのか。ミシミシと歪な音を立てて木刀は衝撃を受け止める。
「すまない、切君。僕が引き込んでしまった」
「気にしてないよ。大丈夫」
サッカーボールやパイロン、地ならしローラーが飛んでいき、早乙女君に激突する。早く私達も逃げないといけないけど、私を抱いたままじゃ九能先輩は必殺剣を使うことは出来ない。
「(誤魔化しは無し……やろう)九能先輩、少し苦しいかも知れないけど、我慢して貰えるかな?」
「切君のやることは何でも受け入れよう!」
彼の優しさにクスクスと笑ってしまう。
ゆっくりと九能先輩の腰に両足を絡め、スカートの中に隠していた如意棍槍を引き伸ばして、まともに練ることも出来ない気血を無理やり起こし、槍を頭上に持ち上げて高速回転させる。
「糸色流秘奥義、降龍天臨霹ッ!!」
「これはッ…!」
グルグルと竜巻とは真逆の螺旋を生み出し、身体を安定させて浮き上がる。手首の強さと回転力を必要とする、この技は力ではなく速さを旨とする奥義────。
けど、やっぱり力が足りない。貧力虚脱灸のせいで、九能先輩と私を支える力が、どうしても足りなさすぎる。このままじゃ落ちる…!
「切君、この高さならもう僕は大丈夫だ!」
「好きな人を見捨てるのはダメだッ」
「君は本当にッ、頑固すぎる!」
いきなり訳の分からない事を言いながら降龍天臨霹を維持する私の手を握り、手を止めた九能先輩を見た瞬間、視界が赤く染まって、鉄臭さに戸惑う。
「げほっ…血、出ちゃった…かな…」
「だから言っているだろう!?早乙女乱馬っ、僕と切君は先に竜巻を出るぞ!!あかね君と破灸法の紙を絶対に守りきれ!」
「言われるまでもねえっ!!」
九能先輩の激励にあかねさんを受け止めた早乙女君が空を舞う破灸法の紙を目指して泳いでいるところを見つめながら、私は竜巻を突き抜け、フェンスに木刀を突き刺し、地面に向かって滑り落ちる。
「糸色殿ッ、お主も…!」
「あ、これは違うから、無理に気血を通して」
お婆ちゃんに言い訳するも信じてもらず、怪しげな漢方薬と生の何かを口の中にねじ込まれ、ゴクンと飲み込んでしまった。
く、臭いし、生臭い、ヌメヌメした、なに?
何を食べたの?
困惑する私の真横に早乙女君とあかねさんに潰されたお爺ちゃんが落ちてきた。……今度こそ完全に気を失っているみたいだね。