「ふむ、うむ、どうしたものか?」
ウンウンと唸る九能先輩は珍しく本物の刀を持っている。剛刀「風林火山」の怨嗟の念を感じ、背筋にゾワゾワとするものを感じるけど。
少し警戒しながら九能先輩に近付こうとした瞬間、まだ勝負意欲の収まっていない早乙女君が彼の頭を踏みつけ、勝負を挑んだ瞬間、九能先輩の引き抜いた刀は清浄な気配を放出し、早乙女君を吹き飛ばした。
「まさか、それって聖刀かな!?」
「ムッ?切君、おはよう」
「あ、おはよう。九能先輩」
キンと鯉口を鳴らして刀を納めた九能先輩に駆け寄り、私は鞄に仕舞っていた古今東西のあらゆる魔剣や聖剣、妖刀、聖刀を細かく記した「刀剣秘書」を取り出す。
やっぱり、これは本物の聖刀だ。
「
「フッ。そう褒めないでくれ、如何にもこの九能帯刀が満願丸に選ばれた日本最高の剣士だ。顔良し、姿良し、裕福な上に人格者で強くて賢い、そして婚約者もいる完璧すぎる男だがな」
「……おめぇ、いい加減退きやがれ!」
九能先輩の言葉に頷きつつ、完全に見える刀身の美しい刃紋を見つめてしまう。大業物とは聞いていたけど、まさか本当に切っ先が存在するなんて。
そう思いながら九能先輩はさっきまで早乙女君を踏んでいた足を動かし、仕返しに踏まれたことに怒る早乙女君を見据える。
「けっ。その刀の何がすげえんだ」
「早乙女君、この刀は戦国時代に生きた刀匠の鍛えた伝説の聖刀なんだよ。持ち主はあらゆる願いを三つだけ叶えることが出来る…!」
「願いが叶う!?」
通行人も登校中の生徒もみんな九能先輩の持つ聖刀「満願丸」をみつめる。
「しかし、願い事が決まらんのだ。すでに婚約者もいる僕に欲しいものは無い。どうしたものか」
「じゃあ、オレにくれ!」
「邪念ある者は持てんぞ?」
「おめえには言われたくねえよ」
そう言って早乙女君は満願丸の柄を握った瞬間、右手を押さえながら「アチャアァーーーッ!!」と飛び跳ね、右手をバタバタと動かしている。
「…あたしは触れるんだ」
「あら、私も触れるわね」
「天道なびき、何故焼かれる!?」
「おほほほ、純真な乙女だからよ」
「そ、そうだったのか。てっきり守銭奴だと」
女の子は誰でも掴めるのかな?
あかねさんと天道先輩の触れる満願丸に小首を傾げながら、早乙女君に火傷が治りやすい河童印の軟膏とガーゼ、包帯を使って怪我を手当てしてあげる。