満願丸の願い事を叶える力を狙い始めた早乙女君達に困惑しながらも撃退していく九能先輩を応援しつつ、あまりにも危なかったら手助けするつもりだ。
あかねさんや右京さん、シャンプーも早乙女君のために頑張っている。シャンプーは猫になる体質は良いのかな?と思いつつ、私は小鎌さんを見る。
「覇者を治すのはセッケンで事足りるけど。根本の呪いは解けねえからな」
「句君、お湯はまだ沸かないの?」
「ヤカンじゃ中々沸かないな」
「そう」
ズッシリと椅子を軋ませて、覇者の如く腕を組み、覇気を発する小鎌さんは女子生徒の制服だ。伸縮性を高めているとはいえ、ものすごくキツそうだと思う。
しかし、あの満願丸は本物だと判明している以上、糸色家のコンタクトも有り得る。そうなったら、とても大変な事になるだろうし。
「切ちゃん、どうするんだ?」
「ん、なにを?」
「いやよ。満願丸って願い事を叶えるんだろ?帯刀先輩なら切ちゃんのために使いそうだったから」
「フフ、そんなの使わないように言ってるに決まってるじゃない。人の願いを叶えるのはダメかな。自分の夢は自分だけの宝物だよ」
「オレならプロテイン頼むけどな」
それは、句君や筋肉の人達だけだよ。
あと配合物を見ながら飲むのはやめよう?と言いながら句君と話していると、満願丸を引き抜いた九能先輩は風林火山と共に二刀を斜め十字に振りきった。
「天響剣…!」
「ありゃあ失伝した奥義の筈だろ?」
「いや、剣術の名家なら残っているかも…」
私の言葉に句君は楽しげに、小鎌さんは悲しげに校庭を駆け回っている九能先輩達を見つめる。今の小鎌さんが混ざったら闘気だけで倒せるもんね。
ふと、満願丸が光った瞬間、謎の声が脳内に響く。けど、すぐに収まる。クラスメートのみんなにも聞こえていたらしく、キョロキョロとしている。
「今のって満願丸かな?」
「だろうな。意思のある刀か」
「蛮竜と同じ……ではないね」
蛮竜のほうが位階は上だし、なにより性能が違う。三つの願いを叶える事は出来ないけど、強くて頼りになる武器なのは事実だ。
「玄馬のオッサンと良牙も来たな」
「ムースもいるね」
「オレも混ざっていいか?」
「良いんじゃないかな。あ、でも九能先輩の味方になってあげてね?」
「おう。任せろ」
そう言うと句君は教室の窓から飛び下りて、着地すると同時に校庭に向かって走り出す。流石は本条家、身体の鍛え方は糸色家並みだね。
「小鎌さんはいかないの?」
「…………」
「そうなんだ。じゃあ、お湯が沸くまで待とうね」