九能先輩のお誘いを受けて、彼の屋敷にやって来た私は糸色景様の描いた作品を見上げる。題名は「炎と雷の化生」。ほんのちょっと少し前に会った当主様、糸色妙様の近くに居たような気がする。
そう思いながら絵を見ているとティーセットを持った九能先輩の妹、
「九能先輩はどうしたの?」
「お兄様なら寒水していますわ」
この時期に?と思いながらあかねさんや女の子の早乙女君、小鎌さん、私の写真がいっぱい貼ってある部屋に通して貰った。部屋のドアに「帯刀」って書いてあるから、九能先輩の部屋だね。
椅子に座って目の前に置かれるレモンの香りのする紅茶を見る。
「どうぞ」
「ありがとうございます。あ、美味しい」
「良かったですわ。……あら、効きませんわね」
「?このピリピリする物ってレモンの風味じゃなくて毒物なんですか?」
「えぇ、痺れ薬よ。大の男を簡単に動けなくする代物なのに何故効かないのかしら?」
不思議そうにティーカップを持って紅茶を飲む私の事をジロジロと見つめる小太刀さんの疑問に答えるべきなのかと悩みつつ、そういうこともあるわねと納得する。
「私は毒物にすごい耐性があるから大抵の毒は効かないんじゃないかな?」
「まあ、羨ましい!」
私の曾祖母の
風邪に罹ったとしても処方薬は効果を発揮する前に分解してしまう。だから、私は風邪や病気に罹ることがないように生活している。
ただ、どうしても仕方ないこともあるけど。
「で、お兄様とお付き合いは順調?」
「そもそも恋仲ではありませんよ。九能先輩に私の高祖母の描いた作品を見に来ないかとお誘いを受けて、此処にやって来たんです」
「あら、そうなの?」
少し残念そうにする小太刀さんはパンパンと柏手を打つと忍者が現れる。まあまあ、糸色家だけじゃなくて九能家にも忍者はいるのね!
「小太刀様、何かご用でしょうか?」
「えぇ、お兄様を拾ってきて貰える?」
「御意」
そう言うと影に潜み、消える忍者を目で追う。
我が家の隠密機関と違って、意外と九能家の忍者はフレンドリーなのかしら?と小首を傾げていたその時、頭にワニをつけて九能先輩が戻ってきた。
「小太刀、よくも僕の事を池に落としたな!」
「オホホホ、厚顔無恥なお兄様ったら勝手に恋人扱いするのがいけないのよ!これより切さんはわたくしのお友達になりましたもの!!」
お友達、また増えました!