翌日。
次々と奪われていく天道道場に驚きつつ、私は早乙女君と天道早雲の無謀な賭け事を見つめる。二人ともイカサマの手段を見破っていない。
早乙女玄馬はパンダのまま客寄せの道具として扱われ、私は静かに勝負を見守っていると句君を引き連れてやって来た天道先輩は自信満々に笑う。
「句君が勝ったら居間を返して貰うわよ」
「良かろう。負ければ貴様の部屋を貰う!」
「句君、大丈夫なの?」
「多分、大丈夫だと思う」
そう言うと句君は天道先輩の前に座り、素早く配られるトランプのカードを見つめていたその時、無造作に博奕王Kの右手の人差し指と中指をへし折った。
「ノォーーーッ!!?」
「オレは切ちゃんと違って肉体言語派だ。イカサマしたら次は右手の四指をへし折る。それでも続けたら左手の五指をへし折る。それでもイカサマしたら歯を一本ずつ引き抜いてお前に食わせる」
「コラ!ダメだよ、弱いおじさんを虐めちゃ!」
とんでもないことをやった句君の頭をペチンと叩き、天道先輩を見ると「おほほほ。イカサマを見破れても動きが追い付けないから仕方ないわよね」と笑った。
全く、どういうお願いをしたのかな。
そう呆れながら句君に「あんまり悪いことしちゃダメだからね」と伝えて、早乙女君達のところに向かい、なんだか面倒臭いことになったことを伝える。
けど、小鎌さんじゃなくて良かったかな。
小鎌さんはゲームが苦手だから、博奕王Kと勝負することになったら絶対に怒る。怒ってものすごく怒る。普段の優しい小鎌さんとは思えない怒り方だもんね。
「糸色、どうやって見破るんだ?」
「どうって……呼吸?」
「分かるかあ!?」
「分かるよ、焦るときや集中するときとか」
「ちくしょぉ……」
しくしくと泣き出す早乙女君を慰めるあかねさんと右京さんに苦笑を浮かべつつ、居間を取り返した句君は大きく両腕を広げて、天道先輩のハグを受けている。
成る程、ハグのためにやったわけだ。
「しかし、何とも言えんなあ」
「何がよ、右京」
「ウチが言うんもあれやけど。切ちゃんに出来ることを乱ちゃんのお父さんや、あかねちゃんのお父さんが出来へんとかあり得へんやろ?」
その呟きに、二人の肩がビクリと跳ねた。
「「「お父さん?」」」
「オヤジ、どういうことだぁ?」
「「戦略的撤退!」」
ドタバタと逃げていく天道早雲と早乙女玄馬の二人を見送り、子供達にイカサマをしようとする博奕王Kに、にっこりと微笑んであげる。
すると、素直に負けてくれた。
ちゃんと真面目に勝負しようね?