糸色家と本条家はイカサマに対して物理的攻撃を仕掛けると理解した博奕王Kは早乙女君達に狙いを絞り、徹底的に仕返しをするようだ。
お父さんに受けた雪辱に関しては普通にイカサマを見破っただけで、とくに骨肉を砕く様な死闘を繰り広げたというわけではないらしい。
あの妙様の御意見番の地位に座す糸逢家の当主と渡り合える相手と期待していたのに残念かな。まあ、賭け事なんていう悪いことはやめた方が良いからね。
もっとも早乙女君は実力で勝つためにイカサマの見破り方を句君に教わっている。
「すってんてんになったわね」
「ぢぐじょおぉ…!」
「乱馬、ライバルとして言うが。お前は賭け事に向いていない。正に悲運的すぎる賭け事の弱さだぞ。姉ちゃんにも勝てねえなんて」
「どういう意味じゃい」
「いつも掃除当番でジャンケン負けるだろ?」
「くっ!」
小鎌さんの悔しそうな顔と早乙女君の悔しそうな顔に挟まれた句君は楽しそうだ。あかねさんと右京さん、シャンプーは下着一枚の早乙女君に顔を赤くしている。
「切ちゃんもするか?」
「別に良いけど。私、負けないよ?」
「フッ。じゃあ、ババ抜きだ」
そう言いながらトランプを分けてきた句君の手を見つめつつ、しっかりと手札を受け取る。うん、残りは二枚だけになるかな。
「引いて良いよ」
「待て、なんで二枚になるんだ?」
「揃ったからだけど?」
「姉ちゃん、隣に居たよな?」
「えぇ、凄かったわよ。ジョーカーとハートのエースを残して全部揃っていたわ」
「……オレのは何で揃わねえんだよ」
困惑する句君はジョーカーを引き、私はハートのエースを引いて終わる。糸色流の奥義には色々と変わった事もあるんだよ。
「トリックの答えは分かる?」
「分からん」
「フフ、正解は超神速の手捌きでカードを見比べてすり替えただけだよ。早乙女君の火中天津甘栗拳もやろうと思えば出来るんじゃないかな」
「物理的イカサマね!これなら勝てるある!」
「乱ちゃん、行けるで!」
ワイワイと騒がしくなってきたリビングのソファに座り直し、早乙女君のやる気に満ちた眼差しを見つめる。九能先輩と戦うときと同じくらい真剣だ。
「勝負はトランプに絞るの?」
「ああ、勝ち目があるのはトランプだ」
早乙女君の言葉に納得するものの、博奕王と名乗る彼がそう簡単に勝負を受けるのかと考えながら、東風先生に借りた戦国時代の伝奇を読む。
戦骨という武士の物語だ。
あまりイメージ出来ないけど、彼の碑石が長野県に残っているという話もある。