「龍の髭?」
「うむ、ダディ曰く『この世の男の宝』。時は明治時代、当時の清国より九能家へと譲り受けた品の一つに、その龍の髭が在るというのだ」
「ねえ、男の宝って、何だろうね?」
「それは……言えん」
ぷいっと顔を背ける九能先輩と句君に小首を傾げつつ、小鎌さんと天道先輩を見ると「まだ貴女には早いわ。もしものときはリードして貰えるから」「切ちゃんは、そのままで居て良いのよ」と。
よく分からない言葉を掛けてもらった。
リードして貰えるって、どこに?
そう不思議に思いながらお饅頭みたいな頭の集団に襲われる早乙女君を見かけ、何かあったのかと見ていると「龍の髭はオレのモノだぁー!!」という叫び声と、お爺ちゃんと早乙女玄馬の二人も攻撃される。
「ハゲに追われてるな…」
「おのれ、またか早乙女乱馬」
「龍の髭って、養毛剤とかかしら?」
「あー、男の人って髪の毛を気にしてるわよね」
「してるね」
私と天道先輩と小鎌さんの言葉に、九能先輩と句君は何かを察知し、早乙女君に加勢するために駆け出し、早乙女玄馬とお爺ちゃん達と向かい合う。
「乱馬、手助けするぜ!」
「貴様ら、若者の毛を狙うとは!」
「句、九能先輩、ありがてえ…!」
みんなは何に拘っているのかな?
「男の子って、不思議かな」
「龍の髭ね、これは売れるわね」
「なびき、句と同じ部屋に押し込むわよ」
「……くっ、千円で売って上げるわ」
「悩むんじゃないわよ。あと要らないから」
天道先輩と小鎌さんのやり取りに小首を傾げながらも早乙女君の髪の毛が伸びているようにも見える。本当に育毛剤なのかな?
「ねえ、男の人って禿げるのが嫌なの?」
「早乙女のおじ様はそうね。自分の頭を見て、悲しそうにしているところを何度か見たわ。あと箱一杯の育毛剤の試験品とかね」
「そこまで来ると執念ね」
その言葉に私も同意するように頷きつつ、早乙女君を守っている九能先輩はとてもカッコいいと思う。そう考えていると早乙女君の髪型が変わっていた。
なんだか手心を加えたくなる髪型かな。
しかし、龍の髭って食べ物の名前じゃ?と考えるも髪の毛を縛る紐が食材になるとは思えず、別の何かがあるのかと更に考える。
「あ、おじ様が寝返ったわね」
「やっぱり、気にしてたよね」
そう言って少しだけ哀れみの視線を向ける小鎌さんと天道先輩の眼差しに苦笑を浮かべつつ、私はお弁当箱を閉じて、一つにまとめる。
明日は何を作ってこようかな。
「切さんは気にならないの?」
「え?私は坊主でも良いかなって…」
坊主頭って、すごくかわいいし。