天道道場の近くに建つ母屋に移動し、私と句は湯呑みに注がれたお茶を飲みつつ、自分達の父親を問い詰める二つの家庭を眺める。
「彼女の言う借金は師匠様の遺した物で、我々には金銭を返す事は無いと思うのだが、そこはどうなっているのかを教えて貰えるか」
「早乙女玄馬と天道早雲の二人には支払い義務を付与する書類もあるわよ。拇印もあるし、言い逃れは出来ないからね」
「姉ちゃん、悪徳っぽいぞ」
「句、私だってやりたくないのよ?でも借金返済を請け負うと決めたのは弟子の二人だから」
シクシクと涙を流す彼らを可哀想と思い、返済金額の減額を両親に頼むつもりではあるけど。流石に何もせずに借金返済まで過ごすのは悪い。
「ちなみに借金はおいくら?」
「ざっと500万ほどかしら。一応、曾祖父様と貴方達の師匠は知古の間柄だって聞いているわよ。なんでも呪われた泉がどうとか聞いているけど」
おそらく中国の秘境の事だろうけど。私と句は遺伝的に受け継いでいるし、今更何かを言ったりするつもりも公表するつもりもない。
「天道君、どうする」
「早乙女君、どうしよう」
「これ、親父達の問題って訳だよな?」
「そうね。お父さん達の問題みたいだし、私達はいつも通りで良いかもね」
そう言うとあっさりと離れていく家族にショックを受ける父親達に、スッとテーブルの上に新しいアルバイト先を提案する。
本条家は警護関連の仕事を生業とする家系であり、今回の仕事も中々に返しに来ない事に怒ったからだもの。こうなるのも仕方ないわよね。
「妖怪退治か」
「えぇ、日給10万でどうかしら?」
「やるわ」
「なびき!?いや、私としては嬉しいが」
「お父さん達がね」
「じゃあ、交渉成立ね」
句は後ろに控えていた黒服に書類を渡す。
「しかし、妖怪退治なら大丈夫だろう。ワシも天道君も若い頃はよく退治していたものだ」
「ああ、これなら直ぐに返せるはずだ」
そう言って拳を握る父親達に声援を送りつつ、三つ編みの少年を見据える句に「そろそろ帰るわよ。準備もあるし」と伝える。
「姉ちゃん、ちょっとだけ頼む」
「……はあ、仕方ないわね」
「ありがとう。三つ編み、オレと戦ってくれ」
「オレは三つ編みじゃねえ!早乙女乱馬だ!」
早乙女乱馬。
早乙女玄馬の一人息子であり、無差別格闘早乙女流の二代目を継ぐために武者修行に励んでいるとは聴いていたけど。確かに肉体的な強さはトップクラスだわ。
正直、句じゃなくても滾るわね。
「オレは本条句だ。よろしく」
……ウチの弟ってマイペースなのよね。