切さんのご厚意で呪泉郷に行ける手懸かりを得ることが出来た。必ずや、
そう覚悟を決めていたのに、乱馬君やあかねさん、ムース、シャンプー、良牙君など。あからさまに切さんの身近に居て、腕の立つ格闘家が揃っている。
「なあ、これ罠じゃねえよな」
「乱馬、いきなりどうしたのよ」
「いやさ。糸色以外の大体のメンバーが揃っているし、九能とオヤジ達が残ってても糸色のヤツって基本的に巻き込もうとしねえだろ」
「それは……」
乱馬君の言葉に私達は納得してしまった。
確かに切さんは戦えるけど、戦わないというスタンスを維持している。戦うときは出来るだけ傷付けずに最小限のダメージに抑えている。
お父様の策略ではなく「残り二人の許嫁」のどちらか。あるいは、結託して切さんを我が物にしようとしている可能性も捨てきれない。
「お前ら、最短でゴールするぞ」
「望むところだ」
「糸色には世話になってるからな」
「そうね。あたしの親友だもん」
「ん?
「皆まで言わんでええやろ。ウチの親友や」
男の子と女の子で明らかに対応が違う気もするけど。句に顔を向けると「オレ達の仕える人は人気者だな」と珍しく笑っていた。
なびきと居るときもそうだけど。
この愚弟は、風林町に来てからよく笑うようになってきたわね。まあ、私の親友を手篭め……コホン、告白して恋人にしようとするぐらいに成長している。
「とりあえず、いち速く優勝するわよ」
「姉ちゃんのためにもな」
「そう言うのは言わなくて宜しい」
はあ、と溜め息を吐いて髪の毛をポニーテールに纏めて走るために句と足首を布で結ぶ。体格差を考えると、かなりキツいけど。
走る分には問題なく動ける。
「句、走るわよ。
「おう。姉ちゃんに合わせる」
ゆっくりと意識を整え終えると同時に鳴ったレース開始の合図を聞き、私達は雪山を駆け抜ける。踏んだ雪が圧で固まる一瞬の内に更に加速し、走り抜ける。
「待てッ!!」
「なんで、あんなに早いんだ!?」
本条家は糸色家の息女息男を守る家系、私と句の仕える人は切さん以外にいない。あの子の笑顔を守るために、こんなところで遊んでいる暇はない。
絶対に優勝して直ぐに帰る。
それまで、無事で居てよね。
「姉ちゃんも呪いが解けるといいな」
「それは二の次よ、今は優勝すること!」
それ以外はいまは後回しで良いのよ。