二泊三日の絶叫温泉ペアチケットを楽しんでいる筈の小鎌さんと句君の二人の喜ぶ顔を想像し、久しぶりに一人だけのリビングで本を読んでいると、リンゴーンとインターホンが鳴った。
ドアチェーンとロックを掛けたままドアを少しだけ開けるとお父さんが立っていた。何故、此処に?と困惑する私に「ロックを外して居れてくれるか」と言われ、慌ててドアチェーンとロックを外し、ドアを開ける。
「本条達はどうした?」
「温泉に行ってるよ」
「そうか」
お父さんは靴を脱いで、廊下を曲がり、脱衣所の洗面台で手と口を洗った後、リビングに入るとソファに腰掛け、私はクッションを敷いて床に座る。
「急に来るなんて、どうしたの?」
「母さんの手紙を預かってきた。九能の息子と付き合っている件に微妙な顔をしていたが、面堂の息子より可能性はあるそうだ」
「九能先輩は優しくて頼りになるよ」
そう言ってみるものの、寝崑崙で会ったときの反応を考えると、やっぱりお父さんは私と九能先輩の交際を認めていないのかな。
不安に思いながらもキッチンに向かい、コーヒーを挽いて蒸らしていたカップに注ぎ、リビングに戻るとお父さんは私の借りていた本を読んでいる。
「母さんに似て変な本を読んでいるな。私の書斎に何冊か似たものがある夏休みになったら一度帰ってこい。残りの許嫁が九能の息子を標的にした」
「? どういうことかな。私の問題なのに九能先輩を巻き込むのは間違っているし。お父さんの選んだ相手なのに、言うことを聞かないの?」
「アレを選んだのは母さんだ。私と結婚する以前の伝、糸逢家に嫁いでくる前の母さんが築いていた交遊関係を縛る権利は私にはない」
「そう、なんだ。強いの?」
「いや、強さなら九能の息子だ。問題なのはアイツらの性格だ。目的のためなら最低の行為も反則も望んでやる。気を付けておきなさい。いや、一人は真面目だがバカすぎるか」
「んっ……もう、私は高校生だよ?」
ワシャワシャと頭を撫でてきたお父さんにそう言うものの。久しぶりに頭を撫でてもらえた嬉しさと恥ずかしさに照れてしまう。
「今日はそれだけなの?」
「いや、仕事も幾つかある。切、お前の生活を見てみたかったのもあるが、常日頃から九能の息子を引きずり込んでいる様子もないな」
「? 九能先輩を引きずり込むの?」
「今の発言は忘れて構わない。しかし、不躾めいた言葉になるが、九能に不埒な真似は受けていないな?」
「うん。まだキスしかしてないよ!」
「そうか。アイツは社会的に抹殺しておこう」
なんで、そうなるのかな!?