「切ちゃ……ん……」
「大丈夫だった!?」
ドタバタと家の中に入ってきた小鎌さんと句君の二人はお父さんの姿を見ると同時に顔を青く染め、素早く二人揃って正座してしまった。
そこまで気にする必要ないのにな。と、そう思いながら二人の荷物を受けとり、洗濯物を仕分けしようとした瞬間、お父さんの「切、お前は座っていろ」という言葉に小首を傾げつつ、素直にカバンやリュックを置き、お父さんの左隣のソファに腰掛ける。
「先ず、私の言いたい事を聞いて貰おう。私は本条家の事を信頼しているし、お前達の活躍と日々の警護も忍び達に聞いている」
「(お父さん、また言葉足らずかな)」
申し訳なさそうに正座している二人に、お父さんなりに労っている事を伝えてあげたいけど。静かに聴くように言われたから私も黙っている。
「本条、次の許嫁相手はフランス人だ」
「フランス人!?」
「おフランス…人形遣いか?」
「いや、アレに娘をやるつもりはない。だれが好き好んで娘を人形の嫁に出すと思っている」
人形遣い。
確かに明治時代から糸色家が懇意にしている組織ということは知っているけど。糸逢家にそういう話題を持ってくるとなると、才賀家に嫁いだ類様かな?
そんなことを考えているとお父さんの手がまた私の頭をワシャワシャと撫でてきて、照れ臭さと嬉しさに目を瞑ってしまう。
「では、どの組織と?」
「……シャルダン家だ」
「「え゛っ!?」」
「しゃる、だん?」
思わず、初めて聴く家名に小首を傾げる。
「かつてはお前の母親と雌雄を決した一族だ」
「お母さんと……」
私は、お母さんの過去をあまり知らない。
小鎌さんと句君の反応を見るに、ものすごく強い人なのは分かる。けど、フランスの格闘技と言われても何があるのだろうか。
「サバットの使い手?」
「……いや、アレはタンの使い手だろ」
「たん?」
「句、アンタは黙ってなさい。切さん、私達の口から伝えることは出来ないけど。貴女も強い心を持って挑んでもらえるかしら、その、かなり変態だから…」
「へんたい」
お母さん、貴女は何と戦っていたの?
不安と少しの恐れを感じながらも小鎌さんに警戒心を抱かせる相手に闘志を燃やしてみる。シャルダン家、どんな格闘技だろうと負けないからね。
「姉ちゃん、どうする。オレ、やだぜ?あんな犬食いするヤツをお館様とか呼ぶの。カメレオン並みに舌伸びるんだぜ?」
「やめて。私も呼びたくないわよ、奥様の交遊関係が本当に分からないわ。あの人って本当に糸色家の血筋じゃないのよね」
「こえぇよ。オレ、あんな食べ方強要されるのか」