お父さんの忠告から三日ほど経過し、みんなも温泉を楽しんで帰ってきた。
「今日も愛妻弁当が美味い」
「まだ彼女だよ?」
つぅーっ、と涙を流す九能先輩と三年生の教室の机をくっ付けて天道先輩達とお弁当を食べていると、なにやら購買部の方が騒がしく咽び泣く声が聴こえてきた。
「あかねが乱馬君に毒でも盛ったのかしら」
「実の妹にすごいこと言うわね。いや、購買部って事は遂に来たわね」
そう言うと小鎌さんは何故かお弁当箱の蓋を閉じ、掃除用具ロッカーを開け、分解していた大鎖鎌を組み立てて、教室の入り口に立つ。
「失礼するでございます」
「窓から来たわね」
「うむ、窓から来たな」
「アンタは真面目に来なさい!!」
教室の入り口に向いていた小鎌さんは耳まで赤くしながら振り返った瞬間、大鎌を振り抜き、白いスーツを纏った金髪碧眼の男の人を攻撃する。
「いけませんよ、Mademoiselle。私は無益な戦いを望んでいませんでございます。さて、青い眼に眼鏡、そして、豊満なバストのMademoiselle。貴女が糸色切さんでございますね」
「胸で判断したわよ、アイツ」
「敵ね」「えぇ、女の敵だわ」「九能よりヤバいヤツか?」「いや、九能より酷い変態はいないはずだ」「そうよ、九能君が宇宙一の変態ね」
「おのれら、三年間を共にした級友を何だと思っておるのだ!?切君、僕は決して彼らの言うような変態などではないからな?」
「あ、うん……知ってるよ」
そうっと顔を逸らして、胸を隠す。小太刀さんに見せて貰った秘蔵品の事を思い出してしまい、少し不安になるけど。私は九能先輩を信じているよ。
そんなことを思いながらも白いスーツを着た男の人を見据える。九能先輩より少し背は高いかな。
「さて、私の妻になる貴女の実力を測りたい。もしも私に負けたら素直に着いてきて貰うでございますよ。勿論、お受けになるでございますよね?」
「切さん、受けるなら私は手出しできないわよ」
「切ちゃん、がんばんなさいな」
小鎌さんと天道先輩の言葉に頷きつつ、前に出ようとした私の肩を掴み、九能先輩が一歩前に出ると同時に学校の制服を脱ぎ捨て、一瞬で胴着姿に変身した。
「切君、待つんだ。先手はこの僕が代わりに受けよう。何も知らない切君相手に自ら得意とする土俵に呼び込むなど武士道に反する行為だ」
「宜しい。席に着きなさい。貴方の事も聞いていますよ、九能帯刀。────私のおフランス流格闘ディナー、特と味わって頂きましょう」
かくとう、ディナー?
まさか、食事を模した格闘技をするのかな。座ったまま相手を倒すなんて古流格闘技くらいだよ。