「ぐふぅっ、な、なぜだ?」
「フッフッフッ。貴方では私の相手にならなかったでございますね。さあ、お次は貴女ですよ、Mademoiselle。席にお着きなさい」
もっちりと膨れ上がったお腹の九能先輩の背中を擦りつつ、私を呼ぶシャルダン家の彼の言葉に従って、席に着き、ゆっくりと深呼吸をする。
次々と並んでいくフランス料理を眺めつつ、食事の開始を告げる鈴の音が鳴った瞬間、ものすごい速さで伸びる舌とフォークとナイフに困惑してしまう。
「うげっ、やっぱりシャルダン家だわ」
「姉ちゃん、オレ怖えぇよ」
「私も怖いわよ!?切さん、怖いなら止めていいからねっ。化生みたいなものだから!」
そう言って私にやめるように言ってくれる二人に戸惑い、食べる速さを競う格闘ディナーの活路───いや、食べ方の速さを理解した。
しかし、先ず言いたいことがある。
「ッ、Mademoiselle……私の舌を斬りに来ているのは何故でございますか?」
「お皿を舐めるのはマナー違反だと思うかな」
食べる速度もそうだ。
料理を切り、口に運ぶ。
その速さも凄いとは思うけど、汚い。
そう思いながら私の料理に伸びてきた舌を切りつける動きをこなす度、彼の目付きはだんだんと真剣味を帯び、より素早さを増していく。
「……ふう、御馳走様でした」
ゆっくりと食べ終えた私と、料理の妨害を受け、メインのお肉を食べ損ねたシャルダン家の彼は感涙の涙を流し、私の手を握ってきた。
「Excellent!!!是非、私の妻になりましょう!」
「えっ、いやかなぁ…ご飯は味わってゆっくりと食べたいし。なにより食べ方がすごく汚い」
私がそう言うと九能先輩と小鎌さん、天道先輩も納得するように頷いてくれた。そもそも早く食べるのは身体に悪いから、ちゃんと噛まないとダメだよ?
「フッ、仕方ありませんね。メインMademoiselleには悪いですが、そちらのお二人にも格闘ディナーに参加してもらうでございますよ!」
「あら、タダでフランス料理を?」
「なびき、あんなのと結婚したいわけ?」
「するわけないでしょうが。それに、したら句君が何を仕出かすとか分からないもの」
「私は義妹になるの歓迎よ」
きゃっきゃっと楽しそうに話し出す二人にシャルダン家の彼は咳払いをし、手紙……ではなく招待状を次々と渡していく。
「決着はまた後日でございます。さて、次は早乙女乱馬某と我が妻になる三Mademoiselleの天道姉妹を探しに行かなければ」
なにか、最後に凄いことを言ってたような?