おフランス流格闘ディナーを体得するため、早乙女君は女の子の姿でシャルダン家に花嫁修行と称して向かったようだけど。
九能先輩はフォークとナイフの使い方をマスターし、素早く食べるという特訓に励んでいる。男の子って、どうして、そんなに負けず嫌いなのかな。
そう思いながらフランス料理の本を片手にオードブルからデザートまでしっかりと作り上げる。私が前に通っていた学校は、こういうことも教えてくれたからね。
それにしても、オリーブオイルを使う頻度の多さはどうにかならないかな。いや、良い香りだし、バジルや他のハーブ類とも合うけど。
「句、アンタはどうするわけ」
「……
「えっ、あれ習うの?」
私の知らないことを話している。
「毎日、これが食べられるのか」
また涙を流す九能先輩に「何かあったの?」と聞けば「小太刀が早乙女乱馬に送る痺れ料理を作り、その失敗作を僕に食べさせるんだ」と教えてくれた。
小太刀さんの料理は美味しいけど。
確かに、痺れ薬を仕込んだ料理を食べるのは凄く緊張する。私はまだ食べてないし、痺れる感覚を味わったこともないから凄く気になっているかな。
「とりあえず、行ってくる」
「えぇ、気を付けなさい」
「無理しないようにね」
「共に愛する者のために頑張るぞ、本条弟」
玄関に揃えていたスニーカーを履いて部屋を出ていく句君を見送り、小鎌さんにイートスタイルというものについて訊ねると大食い競争の戦い方だと教えてくれた。
そんな格闘……格闘かな?もあるんだね。
「問題は大食いバトルはかなりファイターが多い上に、アマチュア、プロ、マスター、それなりにランキングも別れてるわ」
「武人の段位と同じものか」
「まあ、それに当てはまるわね。ただ、ファイター達は癖が強すぎるのよね。奥様も何度か優勝しているらしいけど」
「お母さんが大食いに?」
……どうしよう、イメージが出来ない。
お母さんがいっぱい食べるのは知っているけど。そんなに食べるのかと言われるとイメージ出来ないし、お父さんと出会った経緯も気になってきた。
「今度、お父さんに聞こうかな……」
「私はあまりお勧めしないわ。奥様は世界各地を飛び回っているし、私も会ったのは切さんの護衛に任命されたときだったから」
「いつ?」
「十歳の頃ね」
「そんなに前なんだ」
最近、ついたのかと思っていたけど。実は小鎌さんと句君はずっと私の事を守ってくれていたのかな?と考えてしまう。