「良きお家デートだったぞ、切君!」
「九能先輩の家でもデートになるの?」
ちょっとした疑問を聞けばウンウンと九能先輩は笑顔のまま頷き、次こそ早乙女君に勝利してあかねさんとおさげの女(女の子に変わった早乙女君)と交際するそうだ。
「じゃあ、また明日の学校で」
「うむ、気を付けて帰るのだぞ」
しっかりと私の借りているマンションまで見送ろうとする九能先輩の優しさは美徳だと思う。まあ、私の事を勝手に恋人だって言っているけれど。
しかし、九能先輩はまだ「愛している」や「好きだ」と私に言ったことはない。私だけに言っていない訳ではなく、交際を申し込んでいる相手には「交際しよう」と言うだけで、彼は愛を囁かない。
本当に私達の事を恋人にしたいぐらい好きなのは事実だけど。一人に好きだと伝えるより、態度で示しているところは好感を持てる。
「…九能先輩、本当に大丈夫ですよ?」
「いや、やはり女性ひとりで夕方の道を歩くのは危険だ。せめて僕が家の近くまで送ろう」
「……フフ、何だか新鮮かな。九能先輩みたいに優しくしてくれる男の人に会ったのは初めてだよ」
「そうか。それは光栄だ」
そう言うと九能先輩は嬉しそうに笑う。この人は普通にいい人なんじゃ?と小首を傾げながら歩いていたその時、ドサッと何かが落ちた。
『貴方もこれで恋人作り!』
ちょっと意味の分からない本に「相楽左之助」の名前を見つけ、パラパラと本を読んでいると「くっ。僕としたことがバレてしまったのか!」と九能先輩は物凄く悔しがっている。
こういうことするんだね。
「…へえ、ガツガツしないほうがいいんだ」
確かに、いきなり私より背の高い男の人に詰め寄られたら怖いのは分かるし。不安になるのもわかるけど、これで恋人が作れるの?
そう不思議に思いながら、私は九能先輩に本を返すと「ガツガツとした男は嫌われるらしい」からなと教えてくれた。
色々と大変なのだろう。
「切君、すまないな」
「べつに問題ないかな」
「そうか。それなら良いのだが」
個人的には高祖父様の名前を使っているのに、あまり共通できるものがなくて残念だ。もっと、いろいろと知れると思ったんだけど。
ほとんどよく分からないデートの作法ばかり。でも、これを読んで九能先輩は私に教えてくれ、安全性を一緒に考えてくれていたのかな。
「小鎌さんにもしてあげてね?」
「ああ、もっと学んだらまた君をデートに誘っても構わないだろうか?」
「……フフ、面白そうだから良いですよ」
次もまた楽しくデートしましょうか。