「……遅いわね」
「心配ないと思うけどなあ…」
うろうろと部屋の中を歩く小鎌さんに、そう良いながら私はリビングのテーブルにノートを広げ、校長先生の出してきたハワイの植物を研究するという不思議な宿題を進めていると玄関のドアを開ける音が聞こえた。
無事に帰ってきたかと思えばボロボロだった。
「…………」
「はあ、お帰り。負けたの?」
「負けた。けど、良かった感じ、だと思う」
「なら良し。手当てする前にお風呂で傷を洗ってきなさい。全く心配させるだけさせて、本人は満足しているんだから本当にもうっ!」
そう言って怒る小鎌さんの口許は緩み、早乙女君もしっかりと仲直りしたんだと思えば大団円かな。まあ、良いことばかりでもないかもだけど。
早乙女君とあかねさんは仲直りしただろう。
一番の問題は天道先輩だ。この一週間、句君の事をすごくからかっていた分、天道先輩がこれから受ける仕返しはとても大変だと思う。
私だって強くても腕力じゃ男の人には敵わない。九能先輩に掴まれば身動ぎだって取ることは出来なくなる。体格を考えると更に大変だね。
「(……小太刀さんのせいで、変な事を知っちゃったから不安だよ、男の人ってああいうのがいいのかなあ……私、九能先輩に頼まれたらどうしよう……)」
「悶々としてるわね」
「してないですよ?」
よく分からないことを言う小鎌さんを見上げると手紙を持っていた投函に入っていたのかな?と小首を傾げながらノートを閉じて、腰なタオルを巻いただけで戻ってきた句君に小鎌さんのパンチが炸裂した。
「ぐふっ!?」
「アンタはいい加減に学習しなさい!切さんは私達の仕える人だって言っているでしょうが!!マジで、何を思ったら全裸で出てくるのよ!!」
「いや、手当てするなら楽かと」
「こんのおばか!」
どうして怒られているのか全く分かっていない句君の表情に、私は苦笑を浮かべつつ、彼に背中を向けて、赤くなっているかも知れない頬を引き押さえる。
ああいうのは、流石にビックリするかな。
せめて、もうちょっとだけ恥じらいを持って欲しいと思いながら背中を向けたまま、私は句君に「天道先輩とはどうするの?」と訊ねる。
「なびき先輩は掴まえる。二度とからかえないように仕返しはするつもりではいるけど。姉ちゃん達は邪魔しないでくれよ?」
「出歯亀なんてするわけないでしょうが」
「優しくだよ?」
「おう」
句君の言葉に不安を感じながら天道先輩に少しだけ応援しているという思念を送り、あとは無事に過ごせる事を願うばかりかな。