轟音と共に振るわれる巨大な腕を一文字槍で受け止め、絡めるように牛角十文字槍を地面に突き立て、牛ゴリラの片腕を縫い付け、彼の身体を横に薙ぐ。
「ぐぶぅっ!?」
「刺さないけど。死ぬほど痛いから!」
四十八本の槍を弾き上げ、全身の隙間を押さえつけ、関節を動けないように槍で檻を作り上げ、脳天に向かって二重の極みを撃つ。
一撃、二撃、三撃、同じ部位に向かって二重の極みを撃った瞬間、ようやく牛ゴリラの意識は途絶え、ザアザアと降り注ぐ雨で濡れた髪を整える。
この子、強いのかも知れないけど。
大きな身体に頼りすぎて関節を押さえ込まれた後の事を考えていなかったかな。それに、私のほうが武器を沢山使っていたからね。
「切さーん!!」
「あかねさん?」
バシャバシャと傘を差したまま雨水を跳ね上げながら駆け寄ってきたあかねさんに小首を傾げつつ、彼女に見つかる前に槍を全部縮めて回収する。
「なにこれ、ごりら?!」
「牛じゃないかな?」
そんなことを話しながら雨に濡れないようにやって来た早乙女君に手伝って貰い、このは謎めいた身体の彼を天道道場に運んで貰う。
「なんで、うちに?」
「みんなが集まれる場所だからじゃねえか?」
「そっか、えへへ」
嬉しそうに笑うあかねさんの笑顔に早乙女君は頬を赤らめ、そっぽを向き、私と目が合うとまた反対側を見て顔を赤らめる。
なんだか赤べこみたいだね。
そう思いつつも起きる気配の無い牛ゴリラを引きずり、天道道場に着き、私は電話を借りて私用で休むことを壬生先生に伝えると「まあ、名家の娘だから用事もあるよね」と納得してもらえた。
ちょっと不満を感じたけど。
「で、コイツがオヤジ達を襲ったヤツなのか」
「うん。多分、そうかな。マントの内側に呪泉郷の顧客名簿もあったから」
水気を絞って切ったマントを畳み、かすみさんにお湯を沸かして貰いながら目覚める気配の無い彼を見る。ゴリラのような身体、牛の顔、鳥の羽、ウナギの尻尾、本当に変わった身体をしている。
「なんだか、スウグみたいだね」
「スウグって、中国の幻獣の?」
「うん。キメラとも言われる色々な動物の身体を持つ不思議な生き物。その力を使えたら凄いんだろうけど、彼はパワーに頼っていたから私の動きを追えなかった」
強さも速さも等しく鍛えないとだめだね。
一瞬、逃げようと動いた牛ゴリラの眉間に二重の極みを撃って動きを止める。何度も二重の極みを極めるのはすごく疲れるから暴れないで欲しいかな。
「お湯沸いたわよ、切さん。あかね」
「ありがとう!お姉ちゃん!」
「ありがとうございます。かすみさん。早乙女君、先にお風呂借りるね?」
「お、おう…」
なんで、みんな言い淀むの?