三十分後、小鎌さんの事情聴取が終わったのか。天道道場の母屋に集まっていた私達のところに小鎌さんが彼を連れて来たかと思えば大鎌を私の服にアイロンを当ててくれているお爺ちゃんに突きつけた。
「八宝斎、この腐れ外道が!」
「ワシゃなにもしとらんぞ!?」
「まあまあ、落ち着きなさいって。小鎌君、一体何があったんだい?」
「……早雲さん、この男はね。人にふざけた名前を付けたのよ、その被害者が彼だった!」
そう言うと顔を赤らめる彼の名前にみんなが興味を示す最中、ポンと手のひらを打ってお爺ちゃんは何かを思い出したように笑顔になる。
「おー、おー、そう言えば十何年前に中国で名付けた子がおったのう。確か名前は、そうパンスト太郎と名付けたんじゃったな」
空気が凍り付いた。
なんと言えば良いのか。
私も九能先輩もあかねさんも早乙女君も句君も響君もムースもシャンプーもお婆ちゃんもかすみさんも天道先輩も天道早雲も早乙女玄馬も視線を逸らし、顔を動かし、なんとか言葉を探してみるも思い付かない。
どう、彼に言えば良いのだろうか。
「なんで、そんな名前をつけたの!」
小鎌さんの怒りは尤もだと私達も納得し、お爺ちゃんを見れば「だって、良い子に育ってほしかったんじゃもん」と小さく呟いていた。
「……あの、さっきから気になったんだけど。お爺ちゃんは太郎君のお父さんとお母さんのどちらに頼まれて名付けをしてあげたの?」
「ワシが勝手に付けただけじゃが?」
少し疑問に思ったことをお爺ちゃんに訊ねたら、とんでもない答えが返ってきた。いや、お爺ちゃんだから何も考えていなかったのかな?
早乙女君達も頭を抱えているもの。
「名前は変えられないの?」
「糸色殿、村の掟は絶対じゃ。しかし、名付け親が名前を変えてれば問題なく済む」
「いやじゃ!そやつはパンスト太郎じゃ!」
「お爺ちゃん、お願い。ね?」
「うぐっ。き、切ちゃんのお願いでもそやつに名付けた名前を変えるのはイヤじゃもん。ワシなりに一生懸命考えた名前だい」
私が頼んでも「いやじゃいやじゃ!」と首を横に振るお爺ちゃんに悲しく思いながら、ふとパンストの文字を変えるのは良いんじゃないかな?と考える。
でも、当て字っぽいからダメかな。
「オレは、一生この名前で、女の子にも素直に名乗れないのかあぁ!?」
そう踞って叫ぶ太郎君。
「哀れだ」「哀れじゃあ」
「おめえら、やめてやれよ」
ムースと響君に苦言を呈する早乙女君の事を横目にどうやって説得しようかと考えていたとき、ふと小鎌さんを見ると目が妖しく光っていた。