「遅刻するぅーー!!!」
「姉ちゃん、大分緩んできたな」
「小鎌さん、お弁当……行っちゃった」
ドタドタと焼き立てのパンを咥えて走り出す小鎌さんを見送りつつ、バターとマーガリン、幾つかのジャムを混ぜる句君に身を引き、スススとトレイを構えてキッチンに戻ってお弁当を持って玄関に向かう。
「句君、先に行くね」
「おお、片付けはしとく」
この前は生卵とオカラ、牛乳やトマトを混ぜたスムージーを飲んでいたけど。句君は強くなるために余念を挟まず、ひたすら自己鍛練を重ねている。
勤勉なのも好感を持てるけど。
流石にジャムを混ぜて塗るのはダメだと思う。
早起きしてパンを作ったのにビックリしてしまったし、あんなに色々と塗ったら味も滅茶苦茶になってしまうのに不思議な事をする。
そう思いながら路地を歩いていると黒バラが降り注いで来るのが見え、小太刀さんがいるのかな?と頭を軽く動かして辺りを見渡すと家屋の屋根に立っていた。
なにかをじっくりと観察しているかと思ったら竹刀を持って走り出し、何か良からぬ事を考えているのは直ぐに理解することが出来た。
「あかねさん、危ない!」
「ちぇりゃあっ!!」
あかねさんは私の掛け声に気づき、ぐるりと身体を捻って飛び回し蹴りを繰り出し、小太刀さんの振るう竹刀を真っ二つに蹴り砕いた。
やっぱり、あかねさんは強いわね。
「あんた、また性懲りもなく!」
「此方のセリフですわ!朝早くから張り込んで見ていれば乱馬様を仲睦まじく朝から乱馬様と一緒に登校して貴女こそ何様のつもりなのかしら!」
「誰と誰が仲睦まじくですって!そんなに会いたいなら自分で行きなさい!!」
殴り合いに発展するかと考えていたけれど。
あかねさんが小太刀さんを投げ飛ばし、投げ飛ばされた彼女はそのまま早乙女君の事を追いかけていき、早歩きで逃げる早乙女君の目の前に九能先輩が通り掛かる。
「あかね君、受け取ってくれ!!」
「いきなり何しやがる!」
「早乙女乱馬、きさま僕に何の恨みがあるんだ」
ゲシッと顔を踏まれた九能先輩は軽やかに着地した早乙女君の胸ぐらを掴み、少し本気で怒っているように文句を言っている。
「あかねさん、おはよう」
「あ、おはよう。切さん」
なんだか大変そうな事になっているねと世間話をしていたら、早乙女君が焦り気味に「許嫁がいるから、な!?言い寄るのはやめてくれ!」と小太刀さんに必死に訴え始める。
九能先輩の妹さんですし、その程度の言葉では止まらないんじゃないかな。