私達の説得も虚しく逃げていくお爺ちゃんに怒りながら嗚咽を漏らす太郎君に掛ける言葉が見付からず、必死に慰める小鎌さんの優しさに安堵を抱く。
しかし、お爺ちゃんも酷い人だ。
早乙女君達がいつも怒っているのがようやく分かった。そして、それ以上に悲しくもなる。私には優しくしてくれるのに、どうしてこんな酷いことをするの?
「太郎、そう嘆くなってオレ達も一緒にあの妖怪爺を説得してやるからよ。な?」
「そうじゃ。オラ達も手伝うだ」
「微力ながらオレも手伝おう」
早乙女君、ムース、響君の三人に励まされながら起き上がった太郎君はコクリと頷き、小鎌さんに視線を向けて頬を赤らめる。
……ひょっとして、好きになったのかな?
そんなことを思いながら口に出そうとしたとき、九能先輩に口許に手を添えられ、静かにするようにと人差し指を唇に添えてジェスチャーされた。
確かに、不躾すぎるかな。
そう反省しながら九能先輩の腕に胸を乗せ、肩凝りを和らげる。ここ数日ほど会う度に抱き締めてくれるのは嬉しいけど。
なんだかワンちゃんのマーキングみたいに思えるのは気のせいで良いのかな?
そんなことを考えていると「正攻法で攻めるのは愚策かも知れねえが、妖怪爺が変な気を起こす前になんとかしねえとな」と早乙女君は自分の手のひらを殴り、外に向かってムースや響君達と走り出していく。
「あとで襲ったこと謝ろうね?」
「…………断る」
「姉ちゃん、そいつボコるぞ」
「落ち着きなさい。今まで人に名乗れなかったから、人との接し方が分からないのよ」
「しかし、ワシに一撃を与えた理由はパンストを使った捕縛術というわけか」
「早乙女君の強力でも千切れないパンストとは素材は一体何を使っているのだろうか?」
「お父さん達の絵面、すごく気持ち悪いわね。パンストを持ちながら議論してるわよ」
「そうねえ」
天道先輩とかすみさんの言葉にパンストを持っていた二人は動きを止め、静かに顔を逸らした。もう、みんなに見られいていたから意味ないと思うかな。
「しかし、困ったことになったのう。ハッピーが逃げに転じれば捕まえるのは至難の技。あやつは中国全土を放浪し、数多の技を盗んだ男じゃ」
その言葉に空気が重くなる。
お爺ちゃんが強いのは知っているけど。お婆ちゃんが、そこまで言うなんて信じられないぐらい強いのは確かなんだろうね。
早乙女君達も怪我せずに帰ってくると良いんだけど。あまり下手に追いかけたらお爺ちゃんもすごく怒りそうなんだよね。