翌日。
「八宝大火輪!!」
チュドーンと響く爆発音に驚きつつ、スカートを押さえて花火の起こった方を向けば早乙女君達が煤けて倒れているのが見えた。
ボロボロになっているけど。普通、花火に巻き込まれたら大火傷を負う筈、ちゃんと手加減してあげているんだと安堵しながら下着を盗もうとするお爺ちゃんに槍の穂先を突きつける。
「お爺ちゃん、いい加減に変えてあげよう?」
「切ちゃんまで言うか。あれらワシなりに一生懸命考えた名前なんじゃ。それを今さら本人が恥ずかしいから変えるなど絶対にいやじゃ!」
流石に、カチンと来た。
「じゃあ、お爺ちゃんが名乗りなさい。八宝斎の名前を捨てて、お爺ちゃんがパンスト太郎を名乗って、あの子に八宝斎の名前を譲りなさい。そんなに自慢したい名前なら出来るでしょう?」
「うぐぐっ…!」
「私の言うことがイヤなら素直に変えて上げなさい。名前もそうだけど、顔や姿がそっくりだからと亡くなった人と重ねられるのも辛いんだから……」
お爺ちゃんが私に糸色景様を重ねている事は知っている。だからこそ言えることだ。しとり様やひとえ様は私に景様を重ねる事はないけれど。
他の人達は生まれ変わりと持て囃していた。
気持ち悪かった。私は、私だ。
糸色の名前を継いでいるけど、糸色景様や妙様、類様のように優れた能力を持っていない。コンプレックス……といえばいいのかな。
彼女達のように華々しく活躍する事は私にはできないし。私に出来るのは好きな人を見つけて、その人とずっと過ごしていけることだけ。
誰も好き好んで五百年続く名家を継ぎたいとは思えない。
「……分かった。ワシも素直になる。じゃから、そんな泣きそうな顔をせんと、いつものように可愛らしく笑っている切ちゃんでいておくれ」
「……ぅん。ありがとう、お爺ちゃん」
私の気持ちが伝わったのか。
素直に名前を変えることを認めてくれたお爺ちゃんに言われたように笑顔を浮かべていたその時、お爺ちゃんが蹄に踏み潰された。
「ぐふっ」
「……えと、太郎君?もう解決していたんだけど」
そう申し訳なく思いながら伝えようと見上げた瞬間、お爺ちゃんの闘気が爆発し、太郎君と私、まだ気を失っている早乙女君達の事を吹き飛ばした。
「もう許さんぞ、おのれらぁ!!」
折角、纏まりそうだったのに残念だと思いながら駆けつけてきたあかねさん達に謝りつつ、ゆっくりと槍を戻して右手を真横に突きだす。
「────槍よ、来い!」
その言葉に何人かが此方を見つめる。
私も覚悟を決めて、あなたを使う。