「────槍よ、来い!」
太郎君の不意打ちを受けて完全に怒ってしまったお爺ちゃんを止めるために身の丈を越える
史上最強の武具「蛮竜」が飛来し、私の右手の中に収まる。大幅な刀身を持つ蛮竜をぐるりと回転させ、ズシリと右肩に柄を乗せて構える。
「獣の槍に並ぶ妖器物、蛮竜!」
「実物を見るのは初めてだが、オラの身体にもすごいビリビリと悪寒が走っとるだ」
シャンプーとムースの言葉を聞きつつ、闘気の塊の中に籠って太郎君の事を探し回っているお爺ちゃんの眼前へと飛び上がり、僅かに此方を見上げた瞬間、蛮竜を乱回転させて〝熱風〟を溜める。
「蛮竜……閃っ!!!」
「加減せし技など通じんッ、侮るなァ!!」
「どぉ~こぉ~じゃぁ~~!」
天道早雲の叫びにピースサインを送り、太郎君の名前を叫びながら蛮竜閃を受け、闘気の鎧の崩れた箇所に向かって蛮竜を振り下ろす。
「削れ、竜鱗の蛮竜っ!」
ドクンッ…!と鳴動する蛮竜の力を受け、両手が焼けるように熱い。やっぱり、まだ未熟な私じゃ竜鱗の能力を万全に活かすのは難しいッ。
「お爺ちゃん、私もお爺ちゃんの事を大好きに思っているよ。ちょっとエッチだけど、優しくしてくれるし、みんなのために良いこともしてくれる。───だからさ」
蛮竜のハバキに右足を叩きつけて闘気の渦を飲み干していく大鉾を力強く握り締め、バチバチと青白い雷撃を纏い始める身体でお爺ちゃんに手を伸ばす。
「一緒に帰ろうぜ、お爺ちゃん!」
そう言ってお爺ちゃんの腕を掴み、怒りに呑まれた闘気の塊を丸ごと蛮竜で吸い上げ、喧騒としている住宅街の電柱に着地し、ぐったりと気を失っているお爺ちゃんに深く溜め息を吐いた。
「……ありがとう、蛮竜」
あなたを使う覚悟を決めた。
コツンと額を刀身に当てると私の気持ちに答えるように、ドクンと蛮竜は鳴動したとき、視界の端に黒い人影が見えたような気がする。影の人。しとりお婆様に取り憑いている妖怪か。
あるいは、私の知らない誰かだな。
そんなことを考えながら、夏祭りで出会った彼女の言葉を思い出す。
「(乙津さんの見た未来の光景もこの一部なのかも知れないけど。必ず、この蛮竜で貴女の見た最悪の未来を切り裂いてみせるよ)」
───だって、私は糸色切だもの。
妙様に教えて貰った言葉を口ずさみ、この世にある全ての遺恨も後悔も最悪も絶望も切り伏せて、私達の歩む未来を切り開いてあげる。