「最近、切君が余所余所しい。なぜだ」
ズーンというオトマノペを背負っている帯刀君の悲しげな顔に小首を傾げる。仲良くしているのは知っているけど。喧嘩するのは初めてかもしれないわね。
まあ、付き合えば喧嘩もするわよ。
「九能ちゃん、また何かやらかした?」
「天道なびき。僕と切君はプラトニック・ラブを謳歌しているし。彼女の父親に結婚後まで我慢するように助言を戴いているのだ」
「へぇ、とっくに手を出してるのかと。チッ。折角、レクチャーしてあげたのにヘタレて追撃してないのね」
なびきの小声を聞き、そちらを見ると「小鎌は黙っててね。ちょーっと商売時みたいだから♪︎」と笑顔を受け、これも切さんのためと仕方なく承諾する。
はあ、かっこいい太郎に会いたいわね。
お父様の指示とはいえ結婚式の準備(という名目上の審議会)を始めている京都の本条家を思う。御庭番衆を率いる四乃森家おも軋轢を生まないと良いけど。
「不安げに見上げる切ちゃん。
「全て買おう。5万出す」
「フッ。流石は九能ちゃんね」
「人の仕える相手の写真を売らないで貰える?流石にそれは看過できないわよ」
「ムッ。ならば彼氏の僕が纏めて買った方が安全ではあるな。よし、もう2万出すから持っている切君の写真を全部くれ」
「売った!」
小悪魔のような笑顔を浮かべた親友の顔にこめかみを押さえつつ、弟と結婚したら毎日のようにタカるかも知れないという未来を想像してしまう。
何とかなると信じたいわね。
「ああ、そういえばクルーザーを買ったとダディが言っていたのだが、夏休みに切君を誘っても問題ないだろうか。その、彼女は乗り物に弱いだろう?」
「…船の免許、あるの?」
「このために取ってきた」
「そ、そう……まあ、私から聞いてみるけど。介抱にかこつけて襲ったらブッ殺すから」
「何故襲う必要がある。僕と切君は相思相愛の恋仲であり、もうすぐ結婚式を挙げることになっているのは知っているだろう」
知っているから言ってるんでしょうが。
「はあ、私も付き添うからね」
「うむ、任せる」
「面白そうね。私も行っていい?」
「当たり前だろう。来ないのか?」
こういう天然っぽいところは本当に切さんにそっくりだと私も認識しているけど。流石に、私も知らないところでバカな真似はしないわよね。
「(ああ、かっこいい太郎君に会いたいわ)」