「ハア、ハア、やっと死にやがったか」
「また気絶したわね」
「乱馬、大丈夫?」
「大丈夫に見えるか!?」
半泣きの早乙女君を慰めるあかねさんに苦笑を浮かべつつ、私の名前も呼ばずに抱き締めるばかりだった九能先輩の目元に乗せたタオルを取り、氷水に浸して、絞り、また目元に乗せてあげる。
「……うっ、ここは?」
「あ、起きた。おはよう、九能先輩」
ずいっと顔を覗き込み、違和感を感じる。
「…………新しい恋の予感だ」
「はい?」
「面影が、青い瞳の君よ!!」
「早乙女君、どうぞ」
「え?イデエェーーーーッ!!!?」
突然、変な事を言ったかと思った瞬間、九能先輩は早乙女君の肩を掴み、力任せに抱き締めた。ミシミシと背骨の軋み、砕けそうになる音が部屋に響く。
危うく鯖折りを受けるところだったかな。
「何しやがらァ!!」
「ぐぶっ」
「九能先輩、大丈夫か、なっ!」
「オラは糸色じゃなかがよぉ!?」
早乙女君のパンチを受けてもやり返さず、頭を押さえ始める九能先輩の肩に触れた瞬間、また襲いかかってきたため、近くにいたムースを押し出す。
ムースも悲鳴を上げて、早乙女君の近くに避難し、ようやく理解した。九能先輩、何かの拍子に頭に衝撃を受けて私達の事を忘れてしまっているんだ。
「九能ちゃん、ストップしなさい」
「君は、だれだ?」
「あたしはクラスメートの天道なびき。で、あそこに立っている胸が一番大きくてメガネを掛けている女の子は九能ちゃんの婚約者よ」
「ぼくの、婚約者…ゔっ、頭が」
「押せば行けそうね。みんな、後ろを向いて、目を閉じなさい。かなり荒治療だけど、これでも大事な
「おお、スゴい気迫だ!」
「なびき、友達思いに育って…うぅ」
「お父さん、泣かないで」
「「「「「(絶対に遊ぶつもりだ)」」」」」
天道先輩は鞄を漁り、マイクと手帳を取り出した。
アレが荒治療の秘策かな?と思いながらも九能先輩と対面するように布団の上に正座し、彼の事を見つめると九能先輩も真剣に私を見つめ返してきた。
「九能ちゃんは喫茶店アミーゴで切ちゃんが大好きな幼なじみだと知り、即告白&プロポーズを同時に行ったわ!更に指輪を嵌めてキスまでしたわ!!」
「「「「んっ?」」」」
「去年の友引町の夏祭りでは着物を着た切ちゃんの背中を見つめていたという話しもあるわよ!貧力虚脱灸を受けた切ちゃんを触ったとき、あたしや小鎌に小さく『しほちゃんが弱くなったせいだ。このままだと結婚前に過ちを犯してしまいそうだ』と言っていたわ!」
「「「「ただの惚気暴露じゃねえか!!」」」」
えと、あはは……。