何だかんだと恋運ぶ呪いの花   作:SUN'S

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恐怖のスイカ島 急

「はあっ!!」

 

「せやっ!!」

 

月の輪のように湾曲した大鎌の横薙ぎを槍の柄で受け止めた瞬間、鎌の刀身が曲がり、片腕に刃筋が食い込み、スイカ畑に鮮血が舞う。

 

この子、強い。

 

タンクトップの生地を噛み千切り、傷口を塞ぎながら彼の事を見つめる。背丈は私と同じぐらいかな。あと一年か二年すれば私より大きくなる。

 

それに、雰囲気的に年上かな?

 

「お姉ちゃん、もうおしまい?」

 

「さあ、どうかな。少しお姉さんも本気を出すけど、ちゃんと着いてきてほしいよ」

 

そう告げると同時に石突きで〝八寸〟を繰り出し、彼の鳩尾を撃つと同時に彼の背後まで駆け抜ける。糸色流槍術の至宝「八寸」を受けて、無事に立っていた人は片手で数える程しか居ないらしいけど。

 

アレは眉唾物だったわけだ。

 

「ビックリしたぁ…!九印、手出し無用!」

 

「すまない。キリオ、手が出てしまった」

 

あの式神の防御を突破するのは穂先を使った〝八寸〟を撃つ覚悟を必要とする。しかし、使えば確実に私は彼の事を傷付け、殺めてしまう。

 

「……キリオ君、貴方の目的は何かな?」

 

「僕の目的はお姉ちゃんだよ。足止め……いや、この場合はお姉ちゃんの審査も加わるのか。兎に角、この勝負は受けて貰うよ!!」

 

なんとなく分かってきた。

 

彼の目的は私の強さを測る事だ。

 

おそらく隠形を極めた何人かが私とキリオ君の勝負を監視し、そのデータを何処かに送っていると考えるべきだ。と、なると思い浮かぶ候補は三つ。

 

一、糸色本家。

 

一、各分家筋。

 

一、光覇明宗。

 

三番目の可能性を見出だせたのはキリオ君の存在だ。唯一、妙様と関わっていた男性の中で、未だに結婚していない僧侶の名前は強羅────。

 

光覇明宗最強の僧侶だと聴いている。

 

つまり、私を通じて妙様を狙っている?

 

「浮気は悪い文明だと思うんだよね」

 

「? なんか勘違いして」

 

「問答無用。愛を壊すヤツは許さない!」

 

石突きの向きを変えて、穂先を用いた〝八寸〟を連続で繰り出し、素早く鋭く残像が球体を作り出すほどに最速の〝八寸〟を叩きつけ、血を吐いて地面にへたり込んだキリオ君を見下ろす。

 

「理由を教えて貰えるかな?」

 

「うわっ、妙のお姉ちゃんよりヤバいじゃん。普通、必殺技を連発とかしないよ」

 

「お生憎様、私は脚力だけは歴代の誰よりも速いと自負しているからね。神速の速さを持つ槍術の使い手に鎌は愚策だよ。……いや、小鎌さんなら全部避けるか防げるだろうし。鎌は愚策じゃないかな?」

 

そう呟きながら私は「割に合わないな、本当に」と両手を上げるキリオ君の事を見下ろす。とりあえず、私の勝ちで良いのかな。

 

「今度は本気で行くよ、お姉ちゃん!」

 

「────ッ、式神も攻撃に加わるわけか!」

 

影の中を縫って現れたクインと呼ばれた式神の爪を槍の柄を楯代わりに使い、顔を蹴りつけて後ろに飛び退く。アレは、かなり強い式神かな。

 

「九印、捕まえろ!」

 

「分かった」

 

「あはは、捕まるのは勘弁かな」

 

私の〝八寸〟を受けて倒れない。身体の強度か密度が普通の人の倍以上は確実にある。兎に角、まずは倒す事に集中したほうが良さそうだね。

 

「八寸はもう効かないよ。なれちゃったからね!」

 

大胆不敵に笑ったキリオ君は大鎌を振るい、地面ごと私の足元を切り裂き、跳び上がる瞬間を狙ってクインのパンチが私の身体を吹き飛ばす。

 

ミシリ、と鈍い音が身体を貫く。

 

「カハッ…!?」

 

「妙のお姉ちゃんなら簡単に避けるのに。どうして、お姉ちゃんは弱いくせに蛮竜を使えるのさ?」

 

「ゲホッ、知りませんよ。私だって好きで蛮竜に選ばれた訳じゃないし、弱いのも自覚しているよ。だけど、弱いから諦めるのは違う。望んでいない力だとしても、誰かの役に立てるかも知れない」

 

ゆっくりと口許の血を拭って立ち上がる。

 

「しとりお婆様が言っていたよ。無理矢理でも生きているほうがいい。生きてさえいれば、新しい道もある。例え苦難でも困難でも進んで行ける勇気を出せるのは、自分だけなんだから」

 

「……新しい、道……」

 

「見付からないなら手伝うよ。私も私のお友達もみんな優しくていい人ばかりだからね」

 

「……ウン。良いね、新しい道!ずっと真由子お姉ちゃんの家に居着くのも違うから、僕は無理矢理でも生きてみるよ。九印と一緒に新しい道を探してみる」

 

そう言うとキリオ君は鎌を仕舞い、走り去ってしまった。結局、私はどういう理由で狙われたのか。よく分からないままだったけど。

 

ちゃんと、キリオ君は笑っていたかな。

 

 

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