九能先輩の操縦する「びんせんす号」と名付けられたクルーザーに乗り、早乙女玄馬と天道早雲の二人は釣りを楽しむ最中、私と小鎌さんは乗り物酔いと海の波に酔ってしまい、船内のベッドで眠っている。
「うぅ…えぷ…」
「ゔっ、おぇ……」
お薬を飲んでもまだ気持ち悪い。
「ハーハッハッハッ!!いざ行かん海の道!」
「九能先輩!水上バイク乗りてえ!」
「良かろう!鍵だ、受けとれい早乙女乱馬!」
「ズルいぞ乱馬!」
「そうじゃ!そうじゃ!オラ達も混ぜんか!」
楽しそうに大はしゃぎする男の子達の声を聞きつつ、ぼんやりと句君が抗水セッケンを響君とムースに塗りたくるところを船内から見上げる。
それを追いかけるようにシャンプーや右京さんも早乙女君達の事を追いかけていく。
みんな、元気で良いなあ……。
「切さん、大丈夫?」
「んっ、だいじょーぶだよ」
あかねさんの言葉に頷きつつ、濡れたタオルを絞って新しい水で身体を拭く。水着に着替えておいて良かったと思っていたその時、ゴロゴロと不穏な音が聴こえてきた。
「やだ。一雨来そうだわ」
「まあ、大変ねえ」
「かすみお姉ちゃんも巻き込まれるわよ」
「あら、そうなの?」
天道先輩とかすみさんのポワポワとした会話を聴きながら九能先輩の「来るなら来い!嵐など切り裂いてくれるわ!」という宣言が聴こえる。
妙様は空を斬る事は出来るけど。
まだ、その領域には私は程遠いかな。
「しかし、本当に困ったわね」
「ヒャッホー!!」
「ワハハハ!!飛ばしすぎだぞ、乱馬!」
「サーフボードが弾けるだぁーっ!!!」
「乱ちゃん、ウチも乗せてえなあ!」
「ムースばっかりずるいね、代わるよろし!」
向こうは仲良しでいいね。
「……えゔ、あかねさんもいいよ?」
「あたしは良いのよ。此処、深いし」
「あかねはカナヅチだからねぇ~、句君も泳ぎに行って良いのよ?」
「乱馬達が乗り終わったら代わるつもりだ。そのときはなびき先輩も一緒に乗ろう」
「そんなに私に密着したいの?フフフ、良いわよ。乗ってあげる。けど、変な事はしないでね」
「あ、姉が苦しんでるときに楽しみやがって、愚弟がァ……ゔえぷっ…陸地に着いたら万回はぶん殴ってやるんだからぁ…」
私の隣で怨嗟の声を発する小鎌さんに苦笑を浮かべつつ、あかねさんに手を借りて、船内を出ると確かに暗雲が立ち込め始めているのが分かった。
ただ、普通の雲と違って動きが規則正しい。まるで誰かが操っているかのようにも思える空の動きに少しだけイヤな予感を抱いてしまった。
でも、みんながいる。
なんとかなるという気持ちはある。