嵐に見舞われた私達は何処か分からない無人島に難破し、幸いにも果物や食用植物も群生していた。ただ、嵐の影響で九能先輩の「びんてんす号」の修復は厳しく修復は難しい。
「九能先輩、熱中症になっちゃうから飲もう?」
「ああ、すまないな。切君」
かすみさんの用意してくれた麦茶を九能先輩に差し出して、テントと組み合わせて簡易的なコテージを製作する、みんなの事を見つめる。
無線機は使えるけど。電波を妨害する何かが存在しているのか。ザアザアと砂嵐の様な音を流し、糸色家に連絡する事も出来なくなっている。
「暑いね…」
「確かに暑いが、常夏のバカンスはダディのおかげで慣れている。こうして遭難した際に必要なプロセスやサバイバル技術を記した手帳も受け取っている」
『ダディの㊙サバイバル技術』と書かれた手帳を受け取り、パラパラと読んでみる。これはハワイの観光日誌なのでは?と小首を傾げつつ、手帳を閉じる。
「……九能先輩、私の水着ってどうかな?」
「ムッ。可愛くてセクシーだと思うぞ」
「えへへ、ありがとう」
ちょっと油断して小さいものを買っちゃったから恥ずかしかったけど。九能先輩はこういう水着が好きなら、また来年も着てみようかな。
そんなことを思っていると早乙女君達に追われるお爺ちゃんが此方に向かってくるのが見え、槍を引き伸ばすと同時にお爺ちゃんの逃げる先を変更し、九能先輩の剣圧でお爺ちゃんは吹き飛ばされた。
「全く危険な事ばかりしよってからに」
「フフ、格好良かったよ。九能先輩」
「…うむ、そう言って貰えるのは良いな。しかし、子供の頃はワンパクだった切君もこんなに淑やかに成長していると思うのは感慨深いものだ」
「むっ。悪口は許さないかな」
「悪口ではなく思い出だ」
そう言われてもワンパクなイメージはないかな。いつも九能先輩と仲良く遊んでいた記憶はあるけど。ほとんど坊主頭かスポーツ刈りだった気がする。
多分、私の記憶は間違っていないかな?
まあ、そういうこともあるかもだけど。ワンパクなイメージは絶対に違うよ。
「私、女の子っぽくなかった?」
「何を言う。しほちゃんは昔から可愛かったさ」
「そ、そうかな……」
いきなり可愛いと言われたことに恥ずかしさと嬉しさを感じながらクルーザーの修理を見守っていたとき、不穏な気配を感じて周囲を見回す。
何か居た気がするんだけど……。
気のせいだった?と警戒していたとき、かすみさんがフッと消える瞬間を目撃し、慌ててマストの上に登って周囲を見渡す。
……だけど。かすみさんは見付からなかった。