「かすみぃ~~!かすみぃぃ!!!」
いつもの冷静さを失った天道早雲の悲痛な叫び声を聞きつつ、私達は一瞬で人が消えるという現象の理由を探るように周囲を警戒する。
穏やかで戦う力の無いかすみさんを狙ったということは次の標的は天道先輩ということになる。その次に狙われるのは、私かシャンプーか右京さんかあかねさんか小鎌さんの内の誰かだけど。
「乱馬君、此処は君の出番よ」
「なんでだよ!?それなら一番まともな糸色か小鎌でも良いじゃねえか!ぶえぶっ、何しやがる親父!?」
海水を浴びて女の子に変わる瞬間を見ている最中、九能先輩は船内に残していた武具や非常時に備えた食糧を此方に運んで来ている。
「(かすみさんを狙う理由、綺麗な女性を狙っているのなら次は私以外だろう。左目がくすんだ私を綺麗と言ってくれるのは九能先輩だけだから)」
「とりあえず、囮は増えたわね。目標は日が沈む前にかすみお姉ちゃんを見つけ出すこと。無理なら必ず戻ってくること。良いわね?」
「「「「了解!」」」」
かすみさんの捜索に向かうという話しになり、みんなが散策に向かって走り出す。お爺ちゃんとお婆ちゃんは何か思い当たる節があるのか、かすみさんの近くに落ちていた桃を見つめている。
桃の実。
何かの暗号か、供物か。
戦えないかすみさんを誘拐する相手だ。捕まえたら反省するまでお説教しないといけない。強い人は弱い人を殴るのも蹴るのもダメだ。
それに、私の目じゃ追いきれなかった。
消える。一瞬の内に大人の女性を引き込める力となると相当な怪力だと思う。それこそ響君以上の怪力と考えた方が良いのかも知れない。
「天道先輩、ちょっと良いかな?」
そう言って砂浜を歩きながら後ろに振り返った瞬間、フッと天道先輩の姿が消えた。慌てて、槍を引き伸ばして周囲を警戒するものの、何も見えない。
気配は、存在するけど。
視認できない。あるいは、私には見えないトリックを仕掛けていると考えるのが妥当なのかも知れないけど。少なくとも私より素早く動ける相手だ。
「……桃?」
また、桃の実が転がっている。
「妖怪の仕業じゃないかな」
人為的に拐っている。無人島、女の人ばかりを狙う理由、あの嵐も人が起こしたと考えれば幾つか可能性は浮かび上がるけど。
かなり怪しい可能性だ。
「……みんなに伝える方が先だよね」
周囲を警戒しながらテントを目指して走っていたとき、不自然な影に追われ、危うく呑み込まれそうになるも地面に二重の極みを撃ち込み、飛び退く。
何もいない?