更衣室でドレスに着替えたものの、私と小鎌さんはドレスよりも着物の方が着慣れているから、少し恥ずかしく思ってしまう。
「只今より桃磨様に相応しい花嫁を選ぶため花嫁審査会を開始するでござる。まずは所作の美しさを競うため、お箸の使い方を審査するでござる」
サルトルの言葉に会場はざわめき、巨大な長方形のテーブルに並んだお皿と豆、お箸を見下ろす。こういう謎の審査って何処にでもあるんだね。
ドラマの中だけだと思ってたかな。
そう思いながらも「始め!」の合図に釣られて、思わずお箸を振るってしまった。みんなもまだ集める最中、聞き覚えのある声と共に赤い髪の女の子が桃磨に近付き、話し掛けている。
「早乙女君、何しているのかな」
「知らないわよ、あんなバカ」
「いや、存外バカとは言えないわよ。ああやって全員の注意を引き付けている間に、句達が会場に忍び込んで来ているし。仕掛けるなら油断したとき────」
小鎌さんの言葉に私とあかねさんとシャンプーと右京さんは顔を見合わせて頷き、天道先輩は「私達は離れているわね」とかすみさんを壁際に連れていき、次に起こる出来事を想定している。
ただ、お爺ちゃんがいないのは凄く不安かな。
早乙女君達とは別行動しているのか。
はたまた捕まっているのかは分からないけど。少なくとも早乙女玄馬と天道早雲の二人はもう二度と桃磨達の幻術には掛からない。
「続きましては生け花」
サルトルの言葉にこめかみを押さえる。どう見ても突然変異した食虫植物の処理を押し付けているようにしか見えない光景に溜め息を吐く。
早乙女君が挑もうとする肩を掴み、裁ち鋏を手にとって構え、周囲に放り投げた紙束に跳び移り、余分な枝や葉を切り落とし、軽やかに着地する。
「流石は名家の跡取り候補だわ」
「い、糸色、怒ってるのか?」
「怒ってないけど。か~な~り、不機嫌かな」
「お、おお、怒ると怖いんだな。お前」
裁ち鋏の汚れを拭き取って桃磨を見る。妖気に呑まれ掛けているし、あの刀が余計な力を与えて増長していると考えるのが筋だけど。
白童子のこともある。
それに、アイツは私達で遊んでいる。
「切さん、大丈夫?」
「……えぇ、大丈夫よ。私は人の事を拐った癖に偉そうにふんぞり返っている彼がすごーく嫌いな人と重なったからもう良いかな」
あかねさんにそう話しながら、わざと悪感情を集めるように椅子に座り、全員の注意を私に引き付け、続けるように早乙女君が視線を引き付ける。
今の内に、侵入してもらえるかな。