「ここが、蓬莱島……」
「生気の抜けた森だな」
「そうだろうな。此処に
私と九能先輩の前に現れた白い狩衣を纏い、鬣の燃える白馬を従える白童子を見上げる。この前会ったときより幼く見える姿になっている?
「そう怪しむな。儂は本物だ」
「待て、僕は君の事を知らないぞ!」
「儂の名は白童子、糸色家とは五百年の因縁を持つ者の分身であり、いずれ本物に取って代わろうとしている妖怪の一人だ。兄者に会えたなら宜しく言っておけ」
そう言って私達を前を歩く白馬の燃える尾が足元と周囲を照らし、私は暗い森の中を歩いていると風の匂いが変わったように感じた。
けど、すぐに気配は消える。
「神楽も来ている様だな」
「かぐら?」
「儂の姉の様なものだ。が、すでに死しておる故に奈落の放った複製物だろう。お主らは静かに着いてきておれば何も問題はない」
「その前に切君を呼んだ理由を聞いておきたい」
「この蓬莱島に根付いた大妖怪の死骸を葬り、奈落の復活を遅くするためだ。必要になるのは蛮竜、それを振るえる人間───つまり、糸色の血筋だ」
「……その言い方だと糸色の人間が蛮竜を使えるのは当然のように聞こえるけど。使えない人は本当に使えないから違うんじゃないかな?」
私の言葉に白馬に股がった白童子は笑った。
「やはり知らぬ様だな。鍵を宿し、蛮竜を使える。その価値を考えればお前の価値は妙や景を上回るぞ。おまけに善き魂を持っている」
それは、褒めているのかな?と小首を傾げながら、九能先輩に手を借りて岩を登り、古びた巨大な窯の前にたどり着く。
人の気配は残っていない。
ただ、そこにあるだけの窯だ。
「かつて五百年も昔の事だ。蛮竜の振るう戦骨は大陸に赴き、千万の妖怪を斬り伏せ、その兇鬼の名を轟かせていた頃、大陸を逃げ出した妖怪がいた。其奴の種は飛妖蛾。今は窯の中に繭を作り、眠っている」
「眠っている妖怪を斬れと?」
「いいや、違う。其奴の力を吸い取れ」
「吸い取る……竜鱗の蛮竜かな」
「ムッ。確か、あの緑色の刃だったか」
「うむ」
成る程、斬るだけではなく力を奪うわけだ。
それなら奈落も欲しがるなんていうことはないだろうし。白童子の考える懸念は無くなるということだ。ただ、そこまで分身元を嫌う理由が分からない。
私も何となく名前を言うのはイヤだけど。
そこまで嫌われる理由も知りたいかな。