ゆっくりと意識を集中して蛮竜の能力を竜鱗のものに変えて窯を見上げる。大きな窯、この中に潜んでいる妖怪の妖気を奪い取る。
やっぱり、この力は強すぎる…!
「フゥッ、フゥッ…!!」
「切君ッ、大丈夫なのか!?」
「大丈夫っ、すこしキツいけど」
「ククク、流石は糸色の血筋だ。儂も抜こう」
そう言うと白童子は龍ののような装飾を施された身の丈を越える薙刀を取り出し、私の隣に立つと意識を大きな窯に向けて構える。
「含牙戴角。大業物の一振りだよね、なんで貴方が持っているのか凄く気になるかな」
「嗚呼、コイツは元々儂の得物だ」
確かに、
「またコイツの話しはしてやる。それより儂の妖気とお主の霊気に呼応して目覚め始めておる。さっさと妖気を吸い上げてしまえ」
「僕は何をすればいい?」
「お主は結界を張れ。その木刀なら大抵の妖怪を退ける結界を張るなど容易に出来るだろう」
「九能先輩、お願い出来るかな」
「良かろう!妖怪の一匹や二匹!」
「島にはこやつの子らが何百と居るよ。炎蹄、お前も虫を潰して遊んで来い」
───刹那、炎が駆ける。
あの妖怪は本当に強い。
馬の妖怪は力も妖気も強く主人と認めるのは圧倒的な強者か慈悲を抱ける相手だけ。少なくとも白童子は「えんてい」と呼んだ妖馬を友として扱っている。
「来るぞ。構えろ」
「分かっているかな」
窯の扉が開くと同時に伸びてきた絹のように美しい糸。飛妖蛾の蛹を包み込んでいる巨大な繭の周りに巻き付いているのは、これかと納得し、蛮竜を振り下ろして迫り来る糸を消し飛ばす。
「中に入るぞ」
「えっ。む、虫は苦手なんだけどなあ……」
白童子の後ろを追うように走り、窯の中に飛び込んだ瞬間、全身を貫く強烈な熱気に息苦しさを感じ、慌てて糸を踏みつけて落下を防ぐ。
「やはり妙と同じく地獄の業火に耐性を持っておるな。あやつの場合は冥道だったが、鍵もまた随分と
褒めているのか分からない言葉を呟き、紫に光る球状の結界を展開する白童子の身体が粉々に砕ける。が、すぐに身体は再生した。
「成る程、地獄の熱を浴びて羽化を早めているわけか。白童子、あの大きな繭に蛮竜を突き立てれば終わりで良いんだよね?」
「嗚呼、そうだ。だが、急所を狙え」
急所を狙えって、言われても見えないかな。