「なびき先輩!」
壁を突き破ってなびき先輩の連れ込まれた部屋に入った刹那、犬っぽいオッサンと向かい合うなびき先輩の視線が此方に向き、ホッと安心したように溜め息を吐く。
「句君、やっちゃいなさい」
「任せろ」
そう言うと同時に繰り出した鎖分銅をオッサンは片手で受け止め、力任せに引き寄せてきた。
「この野郎がオレと力比べするつもりか」
「あう?」
「あうじゃねえ!」
鎖に腕を絡めてがら空きのボディに拳をめり込ませた次の瞬間、ボヨンと分厚い脂肪にオレの拳打は弾かれた。コイツ、打撃技を受け流すために、分厚い脂肪と筋肉の層を身体の中に作っているのか。
確かに、それなら大抵の攻撃は躱せる。
あくまで、大抵の攻撃なら、だ。
「本条流を嘗めるなよ、駄犬がァ…!」
「あらやだ。服が弾けてる」
オッサンの頭を掴み、地面に叩き落とす。
起き上がる前に何度も顔面を地面に叩き落とし、徹底的に誰の女を狙っていたのかを理解させ、窓の外に放り投げる。手間取らせやがって。
「なびき先輩、遅くなって悪い」
「べつに良いわよ。意外と句君にもワイルドなところもあるって分かったもの。けど、あたしにあんなことしたら怒るからね」
「ムッ。好きな相手を襲うわけがないだろう」
「ホホホ、肝心なところでヘタレるのは乱馬君と同じみたいだけど。そんなんじゃあ、まだまだあたしを落とすには足りないわね」
「……ここ、二人っきりだって分かってるか?」
「句君、後ろを見てみなさい」
ちょっと調子に乗っているベッドに腰掛けたなびき先輩に迫るように近づいた瞬間、オレの後ろを指差す指先に釣られ、後ろに振り返ると天道早雲がいた。
笑顔。爽やかな笑顔だ。
「いやー、娘を助けに来たら親友の息子がこんな無体を働こうとしていたなんてオジサンは残念で仕方ない。が、不純異性交遊は認めん!」
「ぎゃあああああっ!?落ちるだろうが!!」
その宣言と共に繰り出された蹴りを受け、オレは窓の外に吹き飛ばされる。ちくしょー、絶対に認めて貰うためには何が必要なんだ?
ウンウンと鎖分銅に捕まりながら窓の外で唸り、どうしたものかと悩む。オレの事は認めていると思っていたんだが、迫りすぎているのか?
「なびき先輩にマジで惚れてんだけどなあ」
どうやったら許して貰えるんだ。
乱馬と喧嘩した後、デートしたけど。……やっぱり乱馬が好きなのか?と悩みつつ、切ちゃんと帯刀先輩が離れた島に飛んでいくのが見えた。
蛮竜を使えるから、飛べるよな。
……やっぱ、妖刀って分からねえな。
一方、句君の真上────。
「お父さん、あかねと乱馬君は応援してなかった?」
「乱馬君はヘタレだから応援できる。しかし、句君はヘタレな乱馬君と違って、本心のままなびきを好いている!ゆえに、まだダメだ!」
「ふぅん……だってさ、句君」