「蛮竜、貴様さえ存在しなければ!」
「さっきから蛮竜蛮竜って言っているけど。貴方の目の前に立っているのは私、糸色切だ!蛮竜だけに見惚れていちゃダメかな!」
「────いとしき、イトシキだと?」
発光していた双瞳は細く三白眼のように変化し、鮮やかな紫色の眼差しを見上げてしまう。いや、それよりもどうして飛妖蛾が「糸色」に反応を示すの?
「
憎悪に染まった眼差しに一瞬気圧され、振るわれた豪腕を受けきれず、弾かれ、地面を転がりながら青白く燃える龍の闘気を放ち、飛妖蛾の身体を切り裂く九能先輩と、妖馬に股がって飛妖蛾の触角を切り落とす白童子を見る。
「糸色、忌々しい。よく見ればその面も瓜二つ。瞳はアイツに似ているではないか。よくも儂の前に出てくることが出来たものだ!!」
「おのれ、妖怪めが訳の分からないことを!!」
「九能先輩、ちょっとストップかな。さっきから聞いているけど、私に似ている人にあったことがあるように聞こえるんだけど。誰の話をしているのかな?」
そう問いかけると飛妖蛾は険しく顔をしかめる。
「
喧々囂々の雄叫び────。
突然、知らされた情報に困惑と昏迷を同時に起こしてしまい、戸惑いながらも蛮竜を私達が使える理由を知ったように思えるけれど。
いや、それ以上の戸惑いを感じる。
「何だ。知らなかったのか?」
「は、白童子は知っていたの?」
「知っている。そもそも奈落は糸色家の女を求めているのだ。初代か二代目かは忘れたが、糸色家の女を追い掛けていたのは覚えておる」
そんなことがあったのかと、また驚く私に向かって振るわれた腕を飛び上がって躱し、風の傷を繰り出し、熱風を重ね当てて飛妖蛾の身体を切り裂く。
しかし、知りたくなかった情報だ。
戦国時代に大陸に渡って好き勝手に暴れたという話は聞いているし。明治時代に蛮竜だけが日本に帰ってきて、糸色景様に見つかった話も知っている。
「(蛮竜は戦骨の事が大好きなんだね)」
ドクンッ…!と蛮竜が鳴動する。
私の考えに答えるように鳴動してくれた事を喜び、さっき九能先輩と白童子に話したように最大出力の奥義をぶつけるために私は霊気を込める。
「蛮竜!糸色!お前達を殺せば戦骨も悔しがるだろう!!地獄の底で親子共々悔やんで泣き叫べ!」
その叫びによって生まれた蛾の群れを蛮竜の結界で消し飛ばし、流石に苛々としてきた。私は戦骨の娘じゃなくて、お父さんとお母さんの娘だ。
「ふざけて、呼ぶな!」