午前の授業を終えて、お昼休みになったと同時に突撃してきた九能先輩に早乙女君は足刀蹴りを繰り出し、木刀と衝突した瞬間、僅かに早乙女君が競り負けた。
「いってぇッ…!鉄刀か!?」
「フン。粗末な鉄棒など振るうものか、これは僕の家に代々伝わる伝説の剛刀『風林火山』だ。今日こそ貴様を打ち倒してくれるわァーーーッ!!」
「ヘッ。しゃらくせぇ!」
上段の構えから面、左足を引いて突きに攻撃を変動させ、早乙女君の首や胸を狙う剣戟に関心を向ける。ただ、以前の構えと技術とは少し違う?
「天道先輩、九能先輩の流派って知ってる?」
「あら、私に聞くのね。それで、九能ちゃんの流派だったわね。そういえば聞いたことなかったかも。剣道道場じゃないの?」
天道先輩の質問に私は頷いて、教室という狭い場所で正確には早乙女君だけを狙って攻撃を繰り出す九能先輩の動きは、あらゆる格闘技の総本山と名高き「蒼龍寺」の構えにそっくりだ。
もっとも、あの流派の奥義を使えるのだから学んでいるのは事実なのだろうけど。やっぱり、この学校には色々な拳法や格闘技を使える人が多い。
「さ、早乙女!九能も流石に昼休みなんだから教室で暴れるのはやめてくれ!」
そう思って二人を観察していたら購買部で買ったであろう焼きそばパンを持って訴える先生がが、みんなのために早乙女君と九能先輩の二人を止めに行く。
「突きィ!」
「邪魔だ!」
「がっ!?ぎゃんっ!?」
早乙女君にキックを、九能先輩に突きを受け、先生は掃除用具を詰めたロッカーに向かって飛んでいく。「ちょっと何するなよ、乱馬っ!」とあかねさんが怒りながら倒れた先生の介抱に向かう。
「あちゃー、やっちゃったわね」
「なびき先輩、切ちゃんの作ってくれたお握り食べるか?梅干しだけど」
「あら、ありがとう」
私のお弁当を広げて食べ始める二人にマイペースだなと思いながら私も倒れている先生の介抱に加わり、なんだか大変に思える光景に苦笑してしまう。
べつに勝負をするのは構わないけど。
人様に迷惑をかけて、誰かを傷付けることをするなら私も本気で怒る。そもそも九能先輩も早乙女君も好きならハッキリと「好きです、付き合って下さい」と言うべきなのに、勝ち残り戦をしている。
「イテェ…」
「あ、先生起きた?」
「……か、顔が近いっす」
「そう?」
「切さん、もっと距離感を考えて」
そう言うと私の肩を優しく押すあかねさんの行動に小首を傾げながら従う。何かを変なことしたかな?と不思議に思いつつ、二人を見る。