「九能先輩、九能先輩」
「ムッ。切君、どうかしたのか?」
「パンダのリンボーダンス」
九能先輩の手を握りながら、パンダに変身した早乙女玄馬のブリッジめいた動きを指差すと「アレは切君には無理じゃないか?」と言われた。
体幹は良いと思うんだけど。
いったい、何がダメなのかな?と小首を傾げながら、早乙女君を追いかける桃幻郷の兵士達と、怒っているあかねさんと右京さん、シャンプーを見る。
「やあ、楽しんでいるかい?」
「出たな、幻覚王子!」
「桃磨君」
「僕は幻術王子だ!……全く、君の彼氏はよく分からない言い間違いをしているけど。本当に大丈夫なのかい?なんなら好青年に変えようか」
「止めんか。バカタレ」
「フフ、大丈夫かな♪︎」
私は九能先輩のそういうところも引っ括めて、大好きだからね。好きな人の良いところも悪いところも全部まとめて大好きだ。
「へぇ、そういう恋愛もあるのか。ね、日本にあかねさんに似た可愛い女の子っている?」
「天道あかねは一人だけだ。恋愛をするのなら誰かに似ているではなく、その子を愛しているかによるものだ。幻術王子よ、そこを間違えるな」
そう言うと九能先輩は笑った。
かっこいい……。
「成る程、参考になるよ」
まあ、小鎌さんとかっこいい太郎君の二人は出会って直ぐに電撃結婚しちゃったけど。アレにはビックリした。いや、好きになるタイミングなんて人其々だよね。
「九能先輩、泳ぎに行こう?」
「構わないが、パーカーを着てくれ」
「? わかった」
言われた通りにパーカーを羽織り、九能先輩と一緒に熱い砂浜の上を歩いて、さざ波を作る海の中に入り、九能先輩に手を借りて沖の方まで泳いでいく。
「切君は泳ぎが上手いな」
「水泳は昔から好きだったからかな?」
「……いかん。余計な事を思い出した」
「どうしたの?」
「長野の川で切君の正体を知ったときだ」
「普通に水着じゃなかった?」
「あの時はまだ性別を知らなかったから女の子と知って、猛反省していた。おにっことはいえ、抱きついたりもしていたからな」
照れ臭そうに目を瞑って唸る九能先輩の顔を見ながら、クスクスと笑ってしまう。やっぱり、タッチーは私の性別分かってなかったんだね。
「じゃあ、今の私はどうかな?」
「……大変、魅力的な女性だ」
「ンフフフ♪︎」
顔を赤くする九能先輩にケラケラと笑いながら、ぎゅうっ抱き締めてあげる。本当は海の中だから危ないけど、どうしても抱き締めたくなっちゃった。
「大好きだよ、帯刀君」
「グムッ……!?」