「は、初めまして、九能帯刀と申します」
「……本当に九能帯刀と結婚したのね」
何を考えているのかはわからないけど。お母さんは正座する九能先輩の周りを歩き始め、ジロジロと彼の事を観察して調査している。
私の旦那様なのに、そんなに熱心に見られるのはお母さんでも少しイヤな気持ちになる。
思わず、ぎゅうっと九能先輩に抱き着いて、お母さんの事を警戒すると「ウン。とりあえず、成りすましの可能性は無いわね」と呟く。
九能先輩の偽者なら簡単に見分けられるよ?
「それにしても、二人とも本当に大きくなったわね。と・こ・ろ・でぇ~、私と目君のかわいいかわいい孫はいつ見れるのかしら?」
「そ、それはっ、その」
「ムッ、ムゥ…」
「良いのよ?お母さん、いつでも孫を抱っこする準備は出来ているから!目君もこんな仏頂面だけど、すごく喜んでいるんだもの♪︎」
「そう、なの?」
「……娘の幸せを願わない父親はいない。だが、最後の一人を見つけて、お前の手で倒さない限り、そういう事を認めるつもりはない」
そう言うと腕を組むお父さんの隣に腰掛け、ニヤニヤと笑うお母さんはお父さんの頬っぺたを突いて、「本当の事を言っちゃいなさいよ。ほらほら」と笑う。
「…おしどり夫婦というやつなのか?」
「多分、そうなのかな?」
お父さんとお母さんのやり取りに私達は戸惑いつつ、ゆっくりと背筋を正して私達を見つめる二人の視線に気付き、慌てて私達も背筋を伸ばして正す。
「切、帯刀、私達は二人の婚姻を認めるつもりです。しかし、最後の一人を見つけず、先んじて結婚した事は卑怯千万。結婚式は倒した後に行いなさい」
「は、はい!」
「わかりました。」
「そして、切。貴女の母親として最も大事な事を伝えようと思います。ハッキリと言いましょう。初夜は本当に大変です」
「はいっ……はい?」
「糸色家の女の子が選んだ男性は基本的に粘着性の高いダメ男です。一度、手元に置けば二度と離れられないようにあの手この手を講じます」
「お、お母さん?どうしたの?」
「斯く言う目君もそうでした。信用して油断したところを、いきなり熱烈にそれはもう激しく息継ぎも出来ない程に長いキスをして来たわ」
「ひ、ひぃんっ」
お父さんとお母さんの赤裸々な秘密なんて知りたくない。そもそも結婚を認める、結婚を認めないという話がこんなに簡単に終わっていいの?
そう戸惑いながらお母さんの教えてくれた初夜に必要な知識に顔を赤く染め、何度も何度も九能先輩の事を見てしまった。