先生の手当てをするために保健室に向かっている途中、ふと先生の視線に違和感を感じる。また、なにか私に関係することなのかな?
「……糸色さん、君は輪廻転生を信じるか?」
「あるんですか?」
「いや、その反応を見るに違うな。全く只の教師に変な事を頼まないで欲しいよ」
そう言うと先生はテキパキと手慣れた動きで自分の傷を手当てしていく。よく見れば先生の近くに金色の蝶が飛んでいるのが見える。
金色の蝶。
当主様やしとりお婆様の話していた糸色家の誰かは必ず関わることになる孤高の蝶の使いであり、その金色の蝶が近くを舞う人は『特異点』というそうだ。
「先生は、特異点なんですか?」
「あー、どうなんだろうか。先生は喧嘩は強くないし、出来ることなんて少しだ」
苦笑を浮かべていた先生は「まあ、先生の仕事は生徒を守ることだからね」と言いながら、私の頭を撫でてきた。お父さんとお母さん以外の人に初めて頭を撫でられてしまいました。
どうしましょう?
「あっ、す、すまない。いきなり異性が髪に触れるのは良くなかったね。申し訳ない」
なんだか不思議な人だと思う。
しかし、それよりも気になる人がいる。
「先生、あの窓から覗いている人は誰?」
「……あれは先生の奥さんだね」
サッと視線を剃らす先生の顔色はとても悪く、なんだか憔悴しているようにも見えるけれど。先生の奥さんは当たり前のように窓を開け、保健室に入ってきた。
「あなた、相手は子供よ?」
「はい。私はまだ子供ですね」
「……あなた、この子さては天然ね!」
「?はい、天然物の子供です」
私の頭を撫でて抱き締める先生の奥さんの言葉を肯定すると「……くっ、この子に邪心がないから怒るに怒れない!しかも可愛い!!」と頭を楽しそうに先生の奥さんはワシャワシャと撫でてくる。
ちょっとだけ恥ずかしいけど。先生の奥さんだから、きっといい人なのだろうと思い、先生の方を向けばダラダラと汗を流している。
さては、ものすごく怖い人なのかな?
「……ウチの子にならない?」
「私は糸色ですからお断りします」
この名前を次ぐときに決めました。如何なるときも家名に恥じないように強く優しい人で生きていくことが私の目標なんだ。
「くっ、真剣な顔もかわいいわね」
「褒めて貰えるのは嬉しいかな」
でも、あまり言葉を多用するのはダメです。
言葉の重みが消えてしまうし、大事な言葉は大事なときに伝えるのが一番だよ。先生の奥さんは先生にそういうことを言ってあげるべきです。