獅子咆哮弾を極めるという野望を燃やす早乙女君に対して、響君は着実に獅子咆哮弾を極め掛けている。そもそも早乙女君に獅子咆哮弾は使えない。
「糸色、オレに激気を教えてくれ!」
「……その位置で頭を上げるとスカートの中が見えるから動かないでほしいかな」
ベンチに座った私の足元に跪き、深々と頭を下げる早乙女君にそう言いながら足を閉じて斜めに傾ける。いきなり呼び出してきたかと思えば修行の相手を頼んでくるなんてビックリしたかな。
「私を頼った理由は聞かないけど。気功法はとっくに使えているんだから問題ないんじゃないかな。獅子咆哮弾を無理に破らなくても」
「アイツには勝ちたいんだ」
「…………はあ、基礎だけだよ?」
「助かる!……あ」
「すけべ」
私の足を見て顔を赤く染める早乙女君に文句を言いつつ、私は早乙女君と一緒に天道道場に向かう。私もまだ獣拳を極めた訳じゃないから、あまり参考になるとは思えないんだけどな。
そう思いながら、天道早雲に道場を借りる事を伝えて、更衣室で忍びに用意して貰った袴と胴着に着替えて、道場に立つ早乙女君を見据える。
「先ず、激気と臨気は性質こそ違うけれど。二つとも『獣拳』という流派の物です。勇気や正義を高める激気。憎しみや怒りを糧とする臨気。普段、私達の用いる気功法は激気に相当します」
「それが守る思いが力に変わるってヤツか」
「その通りです。『獣拳』のルーツは4000年前に遡るのですが、今回は省略しましょう。獣拳の理念は『獣を心に感じ、獣の力を手にする拳法』であり、己が内に秘めたる獣を感じ取る事を始まりとします」
緩やかに燃える激気を両手のひらに集め、緩やかに円を描き、とぐろを巻く巨大な蛇の激獣スネークを生み出し、早乙女君に視覚化して伝える。
「糸色は蛇拳の使い手なのか」
「えぇ、私のお師匠様に当たる人物は『獣拳』を極めた七人の拳聖の一人たる激獣バット拳のバット・リー様です。早乙女君も知っての通り、私は左目が殆んど見えていない。それを補い、強くなるために私は彼に師事していました」
激獣スネークを消して、早乙女君を見つめる。
「響君の使う『獅子咆哮弾』は臨獣拳の最強の流派たる臨獣ライオン拳の物に酷似しています。獅子に対する流儀はタイガー拳のみ────」
「オレは虎を心に感じ、手にする訳だな」
「そう言うことかな。もっと深く獣拳を学びたいならスクラッチ社に連絡すると教えてもらえるよ♪︎なんせ、あの会社は激獣拳の総本山だからね」
「ちょっと待て、オレの中華服もスクラッチ社製だぞ!?良いのか、なんか凄そうな流派なのに秘匿しとかなくていいのか!?」
良いんじゃないかな。
「まずは暮らしの中に修行あり、かな♪︎」