「虎、虎、虎、虎、虎」
ブツブツと目を瞑ったまま正座し、しっかりと気力を高める早乙女君の背中に両手を添えて、私の身体に纏う激気の流れを掴んで貰う。
基本的に激気は長年の修行の末、扱える気の力であるため早乙女君や響君、ムースなど気功法を使えるけど。激気や臨気に到っていない場合、その人は自分の内側に眠る獣の力を感じ取る事が出来ていないのだ。
「……虎ァ!!」
ポフンと激気に至らない気力が抜ける。
「ちくしょー、何がダメなんだ?」
「妬みや怒り、憎しみを抱いて激気を使える訳がないかな。それに早乙女君は獅子咆哮弾で勝つことに固執して、臨気に偏りすぎているもの」
「えーっと、臨気じゃダメなんだよな?」
「うん、そうだよ。かつて臨気を極めた拳士が司るのは『憎しみ』『妬み』、そして『怒り』の悪感情かな。特に怒りの感情だけに身を窶すのはお勧めしない。普通に呑まれて怪物になっちゃうから」
「怪物?ああ、たまにテレビで出るあの着ぐるみみてえな奴らか。侍だか忍者だが分からねえカラフルなのと戦ってたのに消えたり……」
侍戦隊シンケンジャーと忍者戦隊カクレンジャーだったかな?どちらも糸色家と関わりを持つ人達だけど。私としては、あまり関わるつもりはないかな。
「…猫ッッッッッッッッッッ!!!!!!!」
「虎の子供だよ、猫じゃない」
「そ、そうか……てか、子供って」
「フフ、心配しなくても激気を高めて行けば私の激獣スネークみたいに大きく育つよ。そのためにも早く激気の感覚を掴んでほしいね」
そう言って少し強めに激気を流し込んだ瞬間、僅かに黄色やオレンジ色とは違う激気の色合いが見えた。臨気?いや、少し違うかな。
早乙女君は特異体質だから、その影響が出ているのかも知れないけど。どちらにせよ、長く続けていけば色合いの変化も見えるはずだ。
「…虎がでかくなった」
「私の激気も混ざったのかな?」
激獣の目が青く見える。
「糸色、ひょっとして貧力虚脱灸の時も激気を使えたんじゃねえのか?」
「あはは、流石に無理だよ。そりゃあ、拳聖様のように獣拳を極めていけば出来るだろうけど。私は護身術程度に習いつつ、達人を目指すかな」
「すげえこと言ったな、お前!?」
そうかな?と小首を傾げていると、いきなり振り向いた早乙女君が私の胸に顔を埋めた瞬間、あかねさんとシャンプーと右京さんの攻撃が早乙女君を襲った。
「乱馬、浮気は許さないね!」
「乱ちゃん人妻はあかんよ!」
「切さんに何するのよ、バカ!」
みんな、覗いてたんだね。