夏休みの校庭は賑わう。
早乙女君と響君の勝負を聞き付けた生徒や教師は集まり、なぜか屋台までできているけど。獅子咆哮弾となれば広範囲に及ぶ攻撃力を持つ。
加えて言えばタイガー拳もそうだ。
飛竜昇天破は温度差を利用するため、冷たく重い獅子咆哮弾には使えない。強気を保って戦えば早乙女君のタイガー拳は大丈夫だ。
「…何を笑っている。乱馬」
「ヘッ。ようやくお前と戦えるんだ。燃えねえわけがないだろう!」
「そうか……オレは憂鬱だ」
明らかに覇気の抜けた響君の態度にイライラとする早乙女君の怒気は虎の象形となって弾け、対するように響君の振るう拳から獅子の獅子の象形が吼える。
「貴様も獅子咆哮弾を極めたのか…!」
「バーカ、コイツは糸色直伝の激気だ!」
獅子咆哮弾の片手版を防いだ事で自信を更に増長させる早乙女君の激気は高まり、強気と重なって混ざる。つまるところ、ものすごく自信満々ということだ。
「獅子咆哮弾ッ!!」
「改訂版猛虎高飛車ァ!!」
改訂版?と小首を傾げる私の隣に座ってきた九能先輩を見たとき、ぎょっとしてしまった。全身に包帯を巻き付け、ボロボロになっている。
会えなかったから、会えるのは嬉しいけど。
「大怪我を負っていたなら素直に休んでいても良かったんだよ?」と言えば「僕の怪我は君の母親に受けたものだ」と言われた。
お母さん、どうしてそんなことを?と小首を傾げ、困惑する私に九能先輩は包帯越しに苦笑を浮かべ、満願丸とは違う刀を差し出してきた。
「菊十文字、十文字兼定の姉妹刀だ。切君に渡して欲しいと言われ、そのついでに娘を奪うカスを殴ると言いながら半日以上は殴られていた」
「菊十文字って、日暮神社に納めていた筈じゃ?」
そんなことを呟きながら刀を受けとり、校庭の中心で気弾の応酬を続ける早乙女君と響君の攻撃は互角、僅かに重さは響君の獅子咆哮弾だけど。
速さは猛虎高飛車かな。
そう考えながら菊十文字を少しだけ抜刀し、鞘に納める。妖刀や聖刀の性質は持ち合わせていない。シンプルに人の鍛えた名刀という感じだね。
「……切君、早乙女乱馬の使っている技は君の物に酷似しているのだが、よもや早乙女乱馬と浮気したのか?」
「するわけないでしょう」
流石に怒るかな。
私が貴方以外に好きになると本気で思っているなら怒るよ。お母さんよりもすごく怒って、九能先輩に反省するように言っちゃうかもね。
それにしても、随分と偏っている。
早乙女君、咆咆弾を使わないのは何故かしら。