「やっ。久しぶり、切ちゃん」
「ツカサ君、こんにちは」
古本屋の糸色景様の本を手に取って見比べていたその時、二眼レフのカメラを首に掛けた楯敷ツカサが爽やかに話し掛けてきた。
また、喫茶店アミーゴで現像するのかな?と思いながら、古本屋の店主に本を差し出し、お財布を開いて本を袋に包んで貰う。
「今日も写真撮影かな?」
「いや、ちょっとした用事でバイト先に居たんだけど。本当に向こうの連中は面倒臭くてさ」
「アルバイト先の人達に聞こえない場所で悪口を風潮するのは良くないよ。それに、人に悪いことをするのはダメだからね?」
「切ちゃんはウソが嫌いなのか」
「好きな人はいないでしょう…」
そう話しながら九能先輩と結婚したことを教えると「もうすぐ平成元年だもんな」と呟く言葉に小首を傾げていると、ツカサ君は、おもむろに私はヘンテコなカードを差し出してきた。
「こんなんで悪いけど。結婚祝いだ」
「んッ……ピリッとした」
「やっぱり糸色に適合するタイプか」
「?」
ブツブツと何かを呟いているツカサ君にまた小首を傾げながら、商店街を歩いていると金色の龍が空を駆け抜ける姿を幻視した。
……最近、幻覚を見るようになってきたかな。
早乙女君に激気を教えるときに感じた違和感もそうだけど。私の周りで、何かが起こっているのは事実だ。そんなことを考えていると飛んできた何かをツカサ君が手のひらを翳して受け止めた。
ポタポタと鮮血が舞い、血が滴り落ちる。
「ツカサ君!?」
「大丈夫だって。それより怪我する前に帰っとけ、お前じゃオレには勝てないんだからよ」
どこかに潜んでいる誰かに、そう告げるツカサ君に向かって殺意を向ける存在に気づき、そちらを見るとボロボロになった女の子が路地を走るのが見えた。
「……彼女を殴ったの?」
「不可抗力……って言っても許して貰えないか。少なくともオレ個人は仲良くしたい。けど、アイツはオレに敵意を持っているんだ」
「ふぅん。名前を聞いても」
「ン・ダクバ・ゼバ」
そう言うと彼は嗤った────。
「白き闇は何処へ向かうのか。ユウスケと出会って、彼女は自分の存在をどう捉えるのか。そういうところもまた面白いと思うんだ」
「よく分からないけど。恋路は邪魔しちゃ駄目よ?」
「恋路。言い得て妙だな。けど、大体分かった。切ちゃんも元気に過ごしてくれよ。アンタは
「はひっ!?」
とんでもないことを言われ、変な声を出してしまう。い、いまのはどういう意味だったのかな?