天道道場、道場内。
私は句君と一緒にあかねさんの練習の相手をしている。小鎌さんは天道先輩に呼ばれて、そのまま退出し、どこかに行ってしまったけど。
「いよいよ今週だね」
「えぇ、何としても勝つわ」
フンスとレオタード姿で勇むあかねさんの言葉に私も頷きつつ、まだクラブやフープの使い方に慣れていない彼女のために句君はリボンを操り、攻撃を繰り出す。
高速の螺旋に混ざって放たれるクラブの突きをあかねさんもクラブで受け止め、素早く身体を捻るように宙を舞い、ボールを蹴って句君のリボンを弾く。
「やっ!」
ツルンと着地した瞬間にあかねさんは自分で蹴ったボールを踏んでしまい、大きく後ろに倒れ───る前に、早乙女君が彼女の事を受け止めた。
「大丈夫かよ、あかね?」
「だ、大丈夫よ、痛っ…!」
「あかねさん、大丈夫!?」
「悪い。弾く向きを変えれば良かったよな」
お姫様抱っこを受けているあかねさんに駆け寄り、彼女の赤くなった足首を見る。捻挫。多分、軽度の捻挫だろうけど。今週中に治るのか怪しい怪我だ。
「格闘新体操は棄権するしかないな」
「ダメよ!あんなに言われて試合前に棄権なんてしたら何を言われるか。それに賞品は乱馬なのよ!せめて、格闘技の出来る女の子がいれば…」
その呟きを言い終えるとみんなの視線が私に集まる。なぜ?と困惑する私は隣に座っていた早乙女君の肩を叩き、ウンと頷いて離れる。
流石にレオタードになるのはイヤかな。
すごく恥ずかしいから、うん。
そう思っているのに、みんなの「後は頼んだ」という視線が突き刺さる。やめてほしい。私は徒手空拳より槍術が好きだから、こういうのは苦手なんだよ。
「切さん、お願い」
「……はあ、お友達だもんね。引き受けるよ」
でも、相手はお友達の小太刀さんなんだよね。
「句君、慣らすから手伝ってくれる?」
「ああ、引き受けるぞ。切ちゃん」
私の言葉に頷いてくれた句君と練習をする前にあかねさんの足首にテーピングを行い、即席の補強を行う。一応、歩けるとは思うけど。
無理したら長引くだろうし。
「あかねさん、糸色の家名に誓って勝つわ」
私の言葉に安心するあかねさんと、なにかに引っ掛かりを感じている早乙女君、句君はいつも通りに私の傍にいるだけで真摯に向き合ってくれる。
そう思いながら更衣室で新品のレオタードに着替える。身体のラインが見えるから、あんまりこういうのは着たくないんだけどな。
「切ちゃん、いつでも良いぜ」
「うん。此方も準備良いかな」
そう言って私達は向かい合う。
「あかねよりデケぇな」
「なんですってぇ!?」
……喧嘩しないでほしいかな。