九能家、九能先輩の寝室。
五人の猛攻を受けて怪我を負った九能先輩は渋々と小太刀さんに謝罪し、一先ずは仲直りしたものの、明らかに過剰に攻撃を受けた彼の傷口に消毒液を染み込ませたガーゼを当てて、消毒し、絆創膏やガーゼを貼り付けて、包帯を巻き付ける。
「すまないな。切君」
「フフ、大丈夫かな。傷の手当ては慣れているから。それに九能先輩は私の写真を取り返すために色々と頑張ってくれていたからね」
「そうか。だが、ありがとう」
「うん。どういたしまして」
そう話しながら、はだけていた胴着を着直す九能先輩の手が止まり、何かを考えたかと思えば徐に私の手首を掴み、畳の上に押し倒してきた。
「えと、どうしたの?」
「切君は少し無防備すぎると思うんだが」
「そうかな?」
手首を掴まれたまま動けない状況に少し戸惑いつつ、私の左頬に触れる彼の手が眼鏡を押し上げ、おぼろ気に近づいてきた九能先輩に身体を強張らせるも、ゆっくりと口づけを交わし合う。
見えないのは左目だけだから、少し恥ずかしいかな。なんて思いながら、長く長く唇を重ねる時間が愛しくて、幸せを感じてしまう。
「……んっ、もうやめるの?」
「お義母様に言われただろう。卑怯千万と。まあ、先に六人も許嫁を作っていた人だからな。ちょっと突拍子もない事を言うのは仕方ないのかも知れん」
「むう、お母さんのお友達に関しては分からないことばかりだからね。シャルダン家の前の家長と早食い勝負を制したとは聞いているけど」
お母さんも舌が伸びるのかな?
そんなことを想像していたとき、ガタンと襖の向こう側で動く気配を感じ、私は槍を突き立て、九能先輩は木刀を突きつけて、襖を吹き飛ばす。
小太刀さん、早乙女君、あかねさん、シャンプー、右京さん、ムース、響君、お爺ちゃんやお婆ちゃんまで一同に会していた。
「「覗き見は悪いことだぞ?」」
そう文句を言うけれど。
「ォア…ォォ…ェオ…キリチャ…キリチャ…ケイドノ…!…」
グチャッ…!と音が響く。
まるで、脳を破壊されたように呻くお爺ちゃん。
「哀れな男じゃな。いつまでも初恋を拗らせおったからに、そんなんじゃから変態になるんじゃ」
「ババア、ジジイの初恋ってまさか」
「左様。糸色景殿じゃ、なまじ親しくしていた分、おしどり夫婦だった相楽左之助殿にも脳を破壊され、恨むに恨めず、このような惨劇を引き起こしておるのだ」
「ジジイ…」
「邪悪妖怪の泣き所というわけか」
これは、私が悪いのかな?
どうしたら、いいんだろう。