大筆と木刀の衝突し、木の軋み、削れ、弾ける音が響く部屋の中、朱墨に変わった筆先が横一文字を描き、格闘書道の基本技術の永字八法の「
「グッ、おのれ…!」
「この私が妙手のお前に負けるものか。潔く敗北を認め、切を私に返すんだ」
「返す、だと?……切君はものじゃないぞ」
私、ものみたいに扱われているのかな?と少しだけショックを受けながら宗達君と九能先輩のところに向かう。けど、絶対に割り込んだりはしない。
多分、割り込んじゃいけないと思う。
そう思いながら何も出来ない自分に歯痒さと、やっぱり人脈的に悪い人を割り出すために、私という人間が最も適しているとお父さんもお母さんも、そして、妙様も人気しているから……。
「僕は負けん!」
「勝てぬ相手に向かうのは蛮勇に過ぎん!」
「それでもだ!!」
九能先輩は筆先を受けながらも木刀を振るい、片手袈裟斬りの一撃を見舞う。お互いに身体を鏡写しのように打って斬り、苦悶の声を上げ、間合いを潰し合う。
「ぐっ、ぐぬあぁ…!」
「フンヌゥゥ…!!」
せめぎ合う攻撃に割り込み、止めたい。
─────だけ、ど、だけど。
二人の戦いをもっと見ていたい。
「お前に」「貴様に」
「「負けるわけにはいかないんだぁ!!」」
刹那、大筆が砕け、間の抜けた表情を浮かべた宗達君の身体に木刀が打ち込まれ、地面諸とも叩き割るほど凄まじい衝撃が地響きを起こした。
「す、まない、遅くなった」
「私は大丈夫だけど、九能先輩…」
朱墨のせいで血なのかはわからないけど。額は裂け、肩や首、腕や足にも生々しく傷が浮かび、左腕に至っては大筆をわざと受け止めるときに犠牲にしている。
「九能先輩、助けてくれて。ありがとう」
「フッ、ふぐっ、と、当然のことだ」
いつものように髪を掻き上げようとして折れた左腕を押さえる九能先輩を慌てて抱き締め、受け止める。
「…………切、どうしてなんだ…どうして」
「ごめんね、宗達君。私は、ううん、オレはずっとタッチーのことが大好きだったんだ。坊主頭にされて泣いてた顔も、自信満々な顔も、みんなに遠巻きに見られるだけだったオレの手を最初に握ってくれたのは、タッチーだから」
宗達君と出会ったのは、タッチーよりも先だったけど。いつもいつも格闘書道の試合を見るときだけ、タッチーがやって来たから、話せるようになった。
「だから、オレは、私は九能帯刀が大好きなんだよ」
そう言って、私には地面に倒れて涙を流す宗達君の傍に座り込んで、次の恋を見つけることが出来るように、優しく頭を撫でてあげることしか出来ない。