自分の情けない姿を晒してしまった羞恥心に耐えつつ、屋上の給水タンクの上に座って、少し溜め息を吐いてみる。これが幸せの絶頂期というものなのかな。
「ウフフ、久しぶりね。切ちゃん」
「魔女先輩、メカニカルな箒かな」
「えぇ、新車の箒を卸してきたばかりでね。折角だから母校を空から眺めようと思っていたら、やたらと色気の増した切ちゃんが居たから話し掛けてしまったわ」
そう言うと魔女先輩はメカニカルな箒の見た目を絵本や童話に登場する木製の箒に作り替えて、そちらに腰掛けながら微笑みを浮かべた。
けど、色気の増したとは?
「ウフフ、可愛いわねえ。うっとうしいとさえ思える悪感情を受け止め、恵みの雨のように洗い流す。精神性の強さで言えば青の魔法使いに似ているわね」
「えと、私は魔法使いにはなれないかな」
「そうでしょうね。この世界で自分の成るべき者を理解しているのはツカサだけ。そして、私の信じる彼なら余計な意思を持たずに貴女を取り込んでいたわ」
「ツカサ君、そんなに危ないの?」
「ウフフ、とってもわるーい男の子よ」
にっこりと微笑んだ魔女先輩は箒を降りて、私の隣に立つと大きな宝石の付いた指輪を差し出してきた。えと、指輪はもう九能先輩に貰っているかな。
「選別にあげるわ。使うときは手に握るか、お臍の辺りに押し当ててくれればいつでも駆けつけてあげる。ただし、お助けは一度きりよ」
クスクスと笑って、また空の旅に戻っていく魔女先輩に手を振りつつ、どうして彼女みたいに優しい人が嫌われていたのか不思議に思える。
「お臍に当てる……」
自分のお腹を少し触ってみるものの、よく分からない。どうやったら指輪を使えるんだろうと思いつつ、空を見上げると刀が空を飛ぶのが見えた。
しかし、それは宝石越しに見えるだけ────。
どこかの、何かを見せる宝石なのかな?と考えながら、変な視線を感じてそちらを見ると、あからさまに変質者っぽい人が佇んでいた。
「見つけたわよ、糸色切!」
「だれ?」
「アタシは逆ハーレムを築く女よ!!」
「ぎゃく?はーれむ?」
なにそれ?と小首を傾げると「……そういえば、まだこの時代って恋愛ゲームないわね」と独り言を呟き始める彼女の近くに着地し、見つめる。
「ひょえっ!?」
「お話しならアッチの影で聞くよ?貴女も私も熱中症になったら危ないから」
「くっ、顔が良すぎる!!」
「ありがとう?」
「くぅぅぅぅっ!!!ハーレムを築くのは私!!」
「はーれむ」
初めて聞く単語だな。