怒濤の面打ちを放つ九能先輩。あかねさん?は面打ちを辛うじて防ぎ、竹刀同士の鍔迫り合いに持ち込むものの、体格と筋力に押されていく。
このまま動きを抑え込めば九能先輩の勝利に終わる。けど、九能先輩の動きが可笑しい。まるで、攻めあぐねているみたいに渾身の一撃が振るえていない。
「竹刀の柄頭で籠手を殴ったな。小手先の技だがカウンター気味に当たって、小指か薬指を痛めてたら帯刀先輩は本気で竹刀を振るえねえぞ」
「握りの要を奪ったわけですわね」
句君の言葉に小太刀さんは言葉を続け、まさかあかねさんがそんなことを?と困惑していたとき、今条マリ子のバトンが白胴着の面具を吹き飛ばした。
「おのれ、さっきから邪魔ばかり!」
「(よ、良かった、あかねさんじゃない)」
ほうっと安堵する私の方に向かって飛んできたバトンを槍で受け止め、弾く。あまり悪戯ばかりするようなら、私も格闘チアリーディングに参加するかな。
そう思っていた刹那、九能先輩の胴具が横一文字にせつだんされた。あと一歩、ほんの数センチ前に踏み込んでいたら九能先輩のお腹も斬れていた。
「秘剣『飯綱』ね。私も見るのは初めてだけど、真空を切り裂く剛剣だとは聞いているわ」
小鎌さんの言葉に観客席の緊張感は増していく。
しかし、それ以上に焦っているのは九能先輩だ。右手の握りを失った状態で繰り出させる技は限られ、面堂君の攻撃を凌ぐのだって大変なはず。
それなのに九能先輩は左手一本に構えた竹刀を正眼に構え直し、面堂君の面打ちに合わせて突きを見舞う。必殺技に相当する技を使えなくても九能先輩は強い。
いや、むしろ片手に構え直してから九能先輩の意識は突き技に集中しているおかげで、いつも以上に意識を研ぎ澄まして高めている。
「決まるわよ」
「……!九能先輩、飯綱は飛ぶよ!!」
「切君!?」
「もう遅い!秘剣『飛飯綱』ァー!!!」
思わず、九能先輩に叫んだ瞬間、面堂君の振り下ろした斬撃は凄まじい突風を巻き起こし、九能先輩の真横を突き抜け、実況席と応援していたチアリーディング部の待機場所を粉々に切り裂いてしまった。
竹刀で、この威力となれば木刀や日本刀を使ってきたら九能先輩でも受けるのは危険すぎるし。なにより今の斬撃は諸星君の事を狙っていた。
つまり、彼は剣道大会にかこつけて、諸星君の事を斬ろうと考えている。とても悪い人というわけだ。それだけは何としても阻止しないといけない。
だって、お友達が傷付くところは見過ごせない。